Monthly Archives: 9月 2024

セクハラ・パワハラ87 不法行為とされた上司のセクハラ言動の一部と、原告の精神疾患発症との因果関係が認められず、会社の安全配慮義務違反及び一部を除き使用者責任も否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、不法行為とされた上司のセクハラ言動の一部と、原告の精神疾患発症との因果関係が認められず、会社の安全配慮義務違反及び一部を除き使用者責任も否定された事案を見ていきましょう。

A社事件(東京地裁令和5年5月29日・労経速2546号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し就労していたXが、上司であったAからセクシュアル・ハラスメントを受け、Y社が事前及び事後に適切な措置をとらなかったため、PTSDないし複雑性PTSDを発病し、休職を余儀なくされた旨主張して、①Aに対しては不法行為に基づき、Y社に対しては使用者責任又は債務不履行に基づき、連帯して、合計1726万3741円の損害賠償+遅延損害金の支払を求めるとともに(請求1)、②Y社に対し、債務不履行に基づき、合計330万円の損害賠償+遅延損害金の支払を求める(請求2)事案である。

【裁判所の判断】

1 Aは、Xに対し、55万円(5万5000円の範囲で被告会社と連帯)+遅延損害金を支払え。
 Y社は、Xに対し、Aと連帯して、5万5000円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、Aの不法行為及びY社の不適切な対応によりXがPTSDないし複雑性PTSDを発病した旨主張する。そして、K医師は、同人作成の「診断書および意見書」において、Xが「PTSD(DSM5)、複雑性PTSD(ICD-11)」であるとし、その原因となった出来事として、「1)勤務先の部長(当時)から、拒否しているにも関わらず、頻繁に食事の誘いをされ、拒否してもやめてくれない上に、社内で追いかけられたり、盗撮されたりしていたことを知ったこと」、「2)2017年1月29日取引先との新年会の帰りのタクシー内で、上記部長から強制わいせつ(無理やり送ると言われ、にじり寄られ、身体に触れるため、叫んで逃げようとしたが、キスをしようとしてきた)を受けたこと」、「3)この出来事に会社が対処してくれなかったこと。」を指摘している。
しかしながら、上記診断結果は、上記意見書の記載内容に照らせば、もっぱらXの主訴に基づくものと解されるところ、Xが主張するAによる不法行為はその一部しか認定できず、Y社の職場環境配慮義務違反を認めることができないことは既に認定説示したとおりである。
そうすると、K医師の上記診断結果は、客観的に認定できない事実関係等に依拠したものといえ、これを直ちに採用することはできない
このことに加え、PTSD(DSM-5)の診断基準としては、・・・とされるところ、本件訴訟において認められるAの不法行為(写真撮影行為及び本件タクシー内行為)は、Xの性的自由を侵害するものであり、Xに屈辱や恐怖等の精神的苦痛を与えるものであったということができるものの、肉体的接触を含む行為に及んだと認められるのは、本件タクシー内行為の一件のみであり、その態様も、タクシーに乗車していた約20分の間、Xの手や太ももに触り、覆いかぶさって抱きつくようにしたというもので、重大な性犯罪に該当するとはいえないし、タクシーには、当然、運転手も乗車しているのであって、Aと二人きりで閉じ込められていたというものではなく、Xは、Aから逃れるためにタクシーを停車させてタクシーから降りたとの事情も併せ考慮すると、当該行為が、上記診断基準を満たすような極めて脅威を感じさせるような性的暴力であったとまでは評価できない
以上によれば、Xが、Aの不法行為及び被告会社の不適切な対応により、PTSDないし複雑性PTSDを発病したとは認められない。

裁判所が、心療内科医の診断とは異なる判断をすることは決して珍しくありません。

裁判では、「診断書にそう書いてあるから」というだけでは十分とはいえない場合がありますので注意が必要です。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2123 感動経営#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

経営において何が大切であるかを振り返るのにとても良い本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

企業は、成長本能と違って、進化に対しては臆病になりがちだ。進化は、企業の本能にはないものだ。だからこそ、進化しようという強い意志が必要となる。」(107頁)

過去の成功体験が時として進化を邪魔することがあります。

過去の延長線をただひたすら歩いていくほうがリスクが少ないように感じてしまうことがあります。

でも、それでは今まで以上に上手に歩くことはできるようになるかもしれませんが、決して空を飛べるようにはなりません。

同一労働同一賃金276 定年後再雇用時の賃金を従前の6割としたことが旧労契法20条に違反せず、また通勤手当を一定距離未満の場合、不支給とした規程の不利益変更が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後再雇用時の賃金を従前の6割としたことが旧労契法20条に違反せず、また通勤手当を一定距離未満の場合、不支給とした規程の不利益変更が有効とされた事案を見ていきましょう。

日本空調衛生工事協会事件(東京地裁令和5年5月16日・労経速2546号27頁)

【事案の概要】

本件は、Y社を平成30年3月に定年退職し、その後、令和2年3月まで嘱託職員として再雇用され、定年退職前の6割の賃金を受給していたXが、Y社に対し、以下の各請求をする事案である。
定年後再雇用に際し、労使慣行に基づき賃金を定年退職前の7割とする再雇用契約が黙示的に成立した、又は再雇用契約において賃金を定年退職前の6割としたことは平成30年7月6日法律第71号による改正前の労働契約法20条に違反するとして、賃金請求権又は不法行為による損害賠償請求権に基づき、差額賃金相当額及びこれに対する遅延損害金の支払
②Y社が平成26年11月19日改正施行の就業規則及び給与規程に基づき、従前は利用距離にかかわらず通勤に利用するバス運賃を通勤手当として支給していたのを改め、最寄駅までのバス路線距離が1.5km未満の場合はバス運賃を支給しないこととしたのは、就業規則等の不利益変更に当たり無効であるとして、賃金請求権に基づき、上記改正により支払を受けられなくなったバス運賃相当額及びこれに対する遅延損害金の支払
③Y社がXとの再雇用契約を更新せず、令和2年3月限りで終了させたことは、65歳到達以降も再雇用契約が更新されるというXの合理的期待に反するとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、1年分の未払賃金相当額(定年退職前の7割を前提に算出)及びこれに対する遅延損害金の支払
④Y社在職中に上司から別紙記載のパワーハラスメントを受けたなどとして、使用者責任又は債務不履行による損害賠償請求権に基づき、慰謝料及びこれに対する遅延損害金の支払

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの職務の内容に関しては、配置部署、勤務時間、休日等の労働条件は定年前後で変化がない。定年退職時に有していた主任の肩書は、再雇用に当たり外されたものの、主任としての具体的な権限は明らかでなく、責任の範囲についても変化は窺われない。しかし、業務の量ないし範囲については、従前はA課長とXの2名で担当していた経理課の業務を、新たに入職したDを含む3名で担当することとなり、経理業務、決算業務を中心に、Xが担当していた相当範囲の業務がDに引き継がれ、再雇用後はXが単独で担当する予定であった福利厚生関係業務も、実際にはA課長と分担していたのであるから、Xの業務が定年前と比べて相当程度軽減されたことは明らかである。

2 定年後再雇用であることが、賃金の減額の不合理性を否定する方向に働く事情として考慮されるべきことは上記のとおりである。特に、定年前のXの給与は、年功序列の賃金体系の中で、長年の勤続ゆえに、担当業務の難易度以上に高額の設定になっていたことが推認され、1400万円を超える退職金も受給したこと、Y社における定年は63歳であり、平成30年4月当時は男女とも特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受給可能であったこと、Xの本件更新拒絶による退職後にその担当業務を引き継ぎ、定年退職時点でのXと概ね同様の業務を分担することとなったEの月給額は、再雇用後のXの基本給と同水準であることも、「その他の事情」として考慮することが相当である。
以上を総合勘案すれば、Xの定年後再雇用に当たり、賃金を定年前の6割としたことが不合理であるとは認められず、旧労働契約法20条に違反しない。

3 本件規程変更に伴い、自宅から最寄駅まで1.5km未満のバス路線を通勤に利用してその運賃相当額を通勤手当として受給していた職員には、これを受給することができなくなるという不利益が生じることになる。しかし、自宅から最寄駅まで1.5km以内という距離は、一般に徒歩圏と受け止められる範囲であり、身体に特段の障害等がない限り、バス路線が設定されていても、徒歩で駅に向かうのが合理的であると解される。現に、この変更によって不利益を被った職員はXとJの2名のみであり、被る不利益も1.5km以内の徒歩を要する程度で、理由はどうあれ、XもY社から身体的な事情による特例支給を打診されながらこれを申請していない。また、かかる打診から明らかなとおり、Y社において変更後も当該規程を柔軟に運用している。こうした事情に照らせば、本件規程変更に伴う不利益は、軽微なものと評価するのが相当である。
他方、Y社においては、予算の効率的執行を図るため、通勤手当の算定方法として最も経済的かつ合理的な通勤経路を明記するという目的で本件規程変更を実施したものと認められるところ、これによる経費節減の効果は僅少とはいえ、一般社団法人であるY社に求められる予算の効率的執行に資することは確かであり、相応の必要性を肯定することができる。
内容面においても、変更後の規定は、社会通念上徒歩圏といえる範囲で、一般的には合理的な通勤経路とはいい難いバスの運賃について通勤手当の支給対象外とするものであり、身体的事情による特例支給も許容する柔軟な運用と相まって、合理的なものと評価することができる。
さらに、Y社は本件規程変更を含む就業規則等の改正に関して、平成26年7月25日の説明会から意見聴取の機会を付与し、職員代表であったXは2回にわたり意見書を提出しており、その中でも本件規程変更に関しては何らの言及がなかった。Xは「条文を読解するには十分な時間がな」いと述べていたものの、意見表明のための検討期間としては、Y社が当初設定した同年9月1日まででも十分な猶予があったというべきであり、同年11月19日に本件規程変更を施行するまでの間に、Y社は職員との関係で必要な手続を履践したと評価することができる。Xが加入する労働組合から、本件規程変更に関する異議が述べられたのは、施行から6か月近く経過した後のことであって、本件規程変更の効力を左右するものとはいえない。
以上によれば、本件規程変更は有効であり、Xの主張は理由がない。

正社員と嘱託社員との同一労働同一賃金問題について、裁判所がどのような点に着目して判断をしているのかを是非確認してください。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介2122 幸せになる勇気#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

幸せになるのに勇気なんて必要なのかな、と思う方もいるかもしれません。

幸せの定義によりますが、他人の評価から自由になるためには一定の勇気が必要だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

われわれは誰しも、客観的な世界に住んでいるのではなく、自らが意味づけした主観的な世界に住んでいる。われわれが問題としなければならないのは、『世界がどうであるか』ではなく、『世界をどう見ているか』なのだ。われわれは主観から逃げることはできないのだ、と。」(53~54頁)

同じものを見ていても、見方、感じ方は人それぞれです。

まさに、グラスに半分入っている水を見て、half fullと感じる人とhalf emptyと感じる人の違いです。

つまり、幸せは客観的な条件を意味するのではなく、純主観的な感じ方に完全に依拠します。

自らの幸せの定義が明確にわかっており、それに沿った生き方ができていれば、たとえどんな状況であったとしても幸せなのです。

労働時間106 就業時間前後における制服の更衣時間の労働時間性が肯定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、就業時間前後における制服の更衣時間の労働時間性が肯定された事案について見ていきましょう。

日本郵便事件(神戸地裁令和5年12月22日・労経速2546号16頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXらが、Y社から着用を義務付けられていた制服の更衣に要する時間は労働基準法上の労働時間に該当するにもかかわらず、Y社はこれを労働時間として扱わず、更衣に要する時間に応じた割増賃金を支払っていない旨主張して、Y社に対し、①〈ア〉主位的に、不法行為に基づく損害賠償請求として、平成29年12月から令和2年11月までの間の未払賃金相当損害金及び弁護士費用相当損害金の合計である各Xに係る別紙の「請求額」欄記載の金員+遅延損害金の支払を求め、〈イ〉予備的に、(a)雇用契約に基づく賃金請求として、令和元年7月から令和2年11月までの間の未払賃金である各Xに係る別紙の「請求額」欄記載の金員+遅延損害金の支払を求めるとともに、(b)労働基準法114条に基づく付加金請求として、上記各Xに係る別紙1の「請求額」欄記載の金員と同額の付加金+遅延損害金の支払を求め、また、②雇用契約に基づく賃金請求として、令和2年12月から令和4年3月までの間の未払賃金である各原告に係る別紙の「請求額」欄記載の金員+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 C3郵便局、C1郵便局、C2郵便局、C6郵便局、C5郵便局、C4郵便局、C7郵便局、C8郵便局、C9郵便局及びC10郵便局には、いずれも更衣室が設置されている。そして、このうち、C3郵便局、C2郵便局、C6郵便局、C5郵便局、C4郵便局、C7郵便局、C8郵便局及びC9郵便局においては、制服を着用して通勤していることが確認できるのは、調査対象者のうちのごく一部であり、これらの郵便局においては、ほとんどの従業員が、各郵便局内に設置された更衣室で更衣を行っているのが実態であるということができる。
また、Y社が作成した「郵便業務のコンプライアンス指導教材(2016年1月期①)」には、「2016年1月1日(金)~31日(日)の間に、対象者(=郵便業務を担当する部署に所属する社員及び総務部に所属し郵便業務に携わる社員)全員に対し、本研修教材を用いて指導してください。」との記載とともに、「勤務時間外のユニフォーム着用・ユニフォーム通勤の禁止」、「お客さまから見た『ユニフォームを着用している社員』は『勤務時間中である』と認識され、ユニフォームを着用したままの飲食店での飲酒等は会社のイメージ低下に繋がるため、勤務時間外のユニフォーム着用の禁止」、「ユニフォームに郵便物・現金等を隠して事務室から持ち出し、窃取等する犯罪を防止するため、ユニフォーム通勤の禁止」との記載があるところ、これらの記載は、Y社として、ユニフォームを着用しての通勤を禁止していたということを窺わせるものである。
さらに、会計事務マニュアルにおいても、平成29年5月付けで改訂される前の会計事務マニュアルには、勤務時間外のユニフォーム着用の禁止が明示的に記載され、同月付けの改訂後においても、これを基本的には控えさせる旨が記載されているのであり、このような記載も、Y社として、ユニフォームを着用しての通勤を禁止していたことを窺わせるものといえる。
他方、C3郵便局、C1郵便局、C2郵便局、C6郵便局、C5郵便局、C4郵便局、C7郵便局、C8郵便局、C9郵便局及びC10郵便局のそれぞれにおいて、ユニフォームを着用しての通勤が許されている旨がY社から各従業員に対して告知されたことはこれまでないことが認められる。
以上のとおり、Y社がユニフォームを着用しての通勤を禁止していたことを窺わせるY社作成の資料があるほか、ほとんどの従業員が、各郵便局内に設置された更衣室で更衣を行っていたという実態がある一方で、Y社からユニフォームを着用しての通勤が許される旨の告知がされたことはないのであるから、Y社は、C3郵便局、C1郵便局、C2郵便局、C6郵便局、C5郵便局、C4郵便局、C7郵便局、C8郵便局、C9郵便局及びC10郵便局の各郵便局内の更衣室において、制服を更衣するよう義務付けていたものと認めるのが相当である。

古典的な論点ですね。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2121 先が見えない時代の「お金」と「幸福」の黄金比(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

サブタイトルは、「最短最速で結果を出して幸せに生きる!新しい『お金の思考法』」です。

まさに今の時代だからこその実現可能な稼ぎ方、生き方を説いています。

もはや昭和の価値観とは180度異なりますね。

経済的にも精神的にも自由に生きたい方は是非読んでみて下さい。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕が見る限り、事業で失敗する人はほとんどが生活水準を上げたことによる『自滅』です。・・・それを考えると、どれだけ成功しても生活水準を一定に保ち、復活できる資金を用意しておくことが大事だと思います。」(130~131頁)

少し表現は違いますが、私も常日頃、「徒に固定費を増やさない」「管理コストがかかるモノには極力手を出さない」ということを強く意識しています。

順調なときを基準にしない、順調なときに調子に乗らない、ということです。

ビジネスは、経済と同様、波があります。良いときもあれば悪いときもあります。

不必要に生活水準を上げなくても、十分楽しめますし、幸せを感じられますので。

従業員に対する損害賠償請求14 横領行為の発覚を隠ぺいする行為に基づく損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、横領行為の発覚を隠ぺいする行為に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見ていきましょう。

フォーバンス事件(大阪地裁令和5年11月16日・労判ジャーナル145号26頁)

【事案の概要】

本件は、反訴において、Y社が、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結していたXの横領行為及びこれを隠ぺいする行為によって追加納税相当額の損害が生じた旨主張して、Xに対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、損害金約1070万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Y社は本件追加納税のうち過少申告加算税、延滞税及び延滞金を納付しており、これらは、いずれもXの賃金額が本来の支給額であることを前提にY社の会計処理を再度行ったことによって各事業年度に既に申告した所得よりもより多くの所得を計上して修正申告書を提出することになったこと及び定められた納期限を徒過して納付したことによって生じたものであり、そして、XはY社の唯一の経理担当職員という立場で本件横領行為及び本件隠ぺい行為をし、その結果Y社の当初の所得額が異なることになったことがうかがわれ、これに反する事情は認められないから、本件横領行為及び本件隠ぺい行為とY社が過少申告加算税、延滞税及び延滞金を納付したこととの間には相当因果関係が認められ、本件追加納税のうち、過少申告加算税、延滞税及び延滞金の合計額99万0400円については本件横領行為及び本件隠ぺい行為との間に相当因果関係のある損害と認められる。

認定されている点については特に異存のないところかと思います。

とはいえ、請求した損害額のほとんどの部分は認められていません。

かなりの労力や経費がかかった点を考慮してくれてもいいと思いますが。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。