Monthly Archives: 8月 2024

本の紹介2115 人を信じても、仕事は信じるな!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「小さい会社には小さい会社なりのやり方がある!」と書かれています。

小さい会社の強みを理解し、その強みを最大限活かす経営をするべきです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『上司はどこを見ている』のかがわかれば、部下自身も『どこに力を入れるべきか』『どこを修正すべきか』がわかります。」(178頁)

受験勉強と同じことです。

採点基準を熟知することから始めましょう。

求められているポイントを押さえない限り、いくら努力をしても結果につながりません。

それは、いわゆる「ずれている」という状態です。

限りある時間の中で効率よく努力をするのです。

対上司に限らず、対顧客も同じことです。

賃金281 定期昇給等の実施が労使慣行として認められなかった事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、定期昇給等の実施が労使慣行として認められなかった事案を見ていきましょう。

学校法人I学園事件(東京地裁令和5年10月30日・労経速2543号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されているXらが、平成28年度から令和元年度の定期昇給及び特別昇給が行われなかったことにつき、労働契約又は労使慣行によりY社は定期昇給及び特別昇給を行う義務を負っていたとして、Y社に対し、労働契約に基づき、定期昇給及び特別昇給が行われていた場合の従来の賃金表に基づく賃金及び賞与と実際に支払われた賃金及び賞与との差額並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社の給与規程では定期昇給について「予算の範囲内において」行うと定められ、給与規程において定期昇給の具体的な内容が定められていたものではなく、その内容が明らかになっているものではないこと、本件組合とY社との間で団体交渉を経て妥結協約書を作成した上で定期昇給が行われてきたことが認められるから、毎年必ず定期昇給を行うことがXらとY社との間の労働契約の内容になっているとは認められない。

2 本件組合において定期昇給及び特別昇給等を団体交渉で要求し、Y社において財政状況を踏まえて予算を検討し、その後本件組合と被告との間で団体交渉を行い、妥結した上定期昇給及び特別昇給が行われてきたこと、Y社が特別昇給の中止を通達したこともあったが本件組合からの抗議があり撤回したこと、Y社から定期昇給を定年5年前で停止する旨回答したものの、本件組合の反対により撤回されたこと、Y社が平成25年3月29日には、平成26年度以降は定期昇給を実施できないことを否定できない旨回答していたこと等が認められ、Y社において定期昇給及び特別昇給を行わない可能性や中止について言及するなどし、定期昇給及び特別昇給を行うことを規範として認識していたとは認められない
また、本件組合においても、定期昇給及び特別昇給が当然に行われるものではないと認識していたからこそ要求していたといえるから、定期昇給及び特別昇給を行うことが労使双方の規範意識によって支えられていたとは認められず、定期昇給及び特別昇給を行うことが労使慣行になっていたとは認められない

労使慣行として認められるのはかなりハードルが高く、そう簡単に裁判所は認めてくれません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。