Daily Archives: 2024年7月3日

賃金280 講座受講費立替金支払請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、講座受講費立替金支払請求が棄却された事案を見ていきましょう。

医療法人社団響心会事件(千葉簡裁令和5年11月28日・労判ジャーナル114号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、Xにが自らの自己啓発のためにY社の研修費用立替制度を利用し、本件各講座を受講したとして、同人に対する、同研修の受講料合計94万9300円から、会社の規定に基づく退職までの期間に応じた免除額を控除した合計89万9300円の支払い及びXの連帯保証人に対する、同人のXの損害賠償義務についての連帯保証契約に基づく同額の履行請求を行った事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社において、通常は、従業員が研修費用立替制度を利用する場合、「研修費稟議書」を提出することとなっていたというのであるから、Xからの「研修費稟議書」が存在しない以上、Xはこの「研修費稟議書」を提出していないということであり、これによれば、XがY社の研修費用立替制度を利用していたというY社の主張は認めることができず、また、XはY社に雇用されるに際して提出した誓約書に記載されている研修と前記「研修費稟議書」を提出して決済を受けなければならないとされている、本件研修費用立替制度を利用した研修とは全く別物であることが認められ、Xが誓約書に署名捺印していることによって、本件研修費用立替制度の利用に同意していたとは認められず、さらに、Y社の請求する本件各講座はY社の負担でXが受講した研修講座であることが認められるから、Xは、いかなる意味においても、Y社との間で立替金を返還する旨の合意をしていた事実は認められず、本件各講座の研修費用立替金の支払義務はない

非常に形式的な理由付けではありますが、そのように解するのが自然だということです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。