おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。
今日は、69歳時点での雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。
エイチ・エス債権回収事件(東京地裁令和3年2月18日・労判1303号86頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で、有期労働契約を締結して内部監査業務に従事していたXが、同契約は労働契約法19条2号に該当し、Y社がXの更新申込みを拒絶することは客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められず、これを承諾したものとみなされるとして、労働契約に基づき、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②令和元年4月分の賃金32万5000円並びに令和元年5月分以降本判決確定の日までの賃金月額32万5000円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xは、X自身として、冷却期間を置いたうえで回収部と対話の機会を見出し定期報告までに解決する必要があると考えていたことが推認され、さらに、Y社代表者から、C取締役経由で回収部と接触するよう指示されていたことを十分認識していたことが推認されるから、仮にXが、Y社代表者が社内で解決すると発言したと認識し、C取締役から回収部の監査について指導を受けたと認識していなかったとしても、Xは、回収部に対する監査実施の必要性とそのための工夫等の必要性を十分に認識していたというべきである。
2 Xは、一定の時期以降、回収部の監査について、なんらの具体的な対応策も取らないままに延期を繰り返していたといわざるを得ない。Xは、Xによる回収部の監査の延期自体がY社代表者に対する問題提起であり、Y社代表者が社内で解決すると言っていたことが実現されるのを待っていたという趣旨のことを述べるが、仮にY社代表者が社内で解決するという発言をしていたとしても、前述のとおりそもそもXの認識によってもY社代表者はXに対しC取締役を介して回収部とやり取りをするよう指示していたのであるから、Xが一方的にそれを実行せずに黙示的にY社代表者へ直接の対応を求めていたというのは、Y社代表者からすればおよそ理解不能なものである。
3 本件においては、Y社代表者やC取締役から事細かな業務改善指導がなかったとしても、前記の注意指導がなされれば、社会通念上相当な注意指導がなされたものといえると解するのが相当である。
第2定年が設定していない会社の場合、どのタイミングで雇止めにするかは悩ましいところです。
年齢にかかわらず、雇止めには合理的理由が求められますので、そう簡単に雇止めをすることはできません。ご注意を。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。