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今日は、競輪選手の師匠に対するセクハラ・パワハラに基づく慰謝料等請求について見ていきましょう。
損害賠償請求(セクハラ・パワハラ)事件(高松地裁令和5年9月29日・労判ジャーナル142号28頁)
【事案の概要】
本件は、競輪選手であるXが、同じく競輪選手であり、Xの師匠であるBからセクハラ又はパワハラに当たる言動を受け、これらによって、Xが精神的苦痛を受けたほか、レースの欠場や成績低下を余儀なくされた等と主張して、Bに対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料、逸失利益等合計約460万円等を請求した事案である。
【裁判所の判断】
BはXに対し、慰謝料10万円を支払え。
【判例のポイント】
1 Bの言動は、Aの成績が低迷しつつあることなどを指摘するに際し、交際相手との関係について直接的に性的表現を用いて叱責するものであり、当時20歳という若年の未婚女性であったXに対して強い不快感と性的羞恥心を与えるものである上、Xの師匠として大きい影響力を有するにもかかわらず、Xの成績に関連付けて交際相手との性交渉のあり方に干渉し、Xの性的自己決定権を害するもので、その内容は悪質であり、社会的見地から見て、不相当とされる程度に至っていたものと認めるべきであり、違法性が認められるところ、Bの言動は、直接的な性的表現を用いてXの練習への姿勢や成績低下を叱責するものであるが、一方で、反復継続してなされたものとまでは認められず、身体的接触等を伴うものではなかったことを踏まえると、これによりXが被った精神的損害に対する慰謝料は10万円と認めることが相当である。
2 違法性が認められるBの言動は上記のみであることに加え、Xが受診していた心療内科の医師においても、休職や通院の原因となったXの適応障害には複合的な要因が考えられるとの意見も述べるものであるから、Bの言動と適応障害によるXのレースの欠場や成績低下との間の相当因果関係を認めることはできない。
レースの欠場や成績低下との間の相当因果関係が否定されたため、上記判例のポイント1記載の慰謝料額にとどまっています。
社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。