Monthly Archives: 5月 2024

有期労働契約125 女性従業員に不適切な言動を繰り返すこと等を理由とする雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、女性従業員に不適切な言動を繰り返すこと等を理由とする雇止めに関する裁判例を見ていきましょう。

ゲオストア事件(東京地裁令和5年6月14日・労判ジャーナル143号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期雇用契約を締結していたXが、Y社から上記有期雇用契約の更新の申込の拒絶(雇止め)をされたことから、Y社に対し、Xにおいて上記有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があり、当該雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとはいえず、労働契約法19条により、同一の労働条件で有期労働契約が更新されたものとみなされることを主張して、労働契約上の権利を有することの確認及び未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、令和2年11月9日、f氏がトイレ掃除をしているトイレのドアをノックし、トイレから出てきたf氏を追いかけて話しかけた上、わざわざf氏と話をするために再度来店し、f氏が会社のアシスタント社員(店長を補佐する役職)のh氏に立会を求めるなど、Xと話すことを嫌がっていることは明らかであったにもかかわらず、本店店舗から出ようとしたf氏にさらに話しかけており、上記行為は、従前からXの言動に不快感を抱いていたf氏に対し、恐怖や不快感を強く感じさせ、多大な精神的苦痛を与えるものであったといえ、その他にも、e氏やj氏などの女性従業員に対する不快感を与える行動が度々あったことや、Xとf氏及びe氏のシフトが重ならないように配慮していたにもかかわらず、Xが勤務終了後に、f氏が勤務している際に再度来店したり、Xが勤務日でない(シフトが入っていない)日にわざわざ本件店舗を訪れてf氏などに話かけていることなども併せ考慮すると、本件雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないとはいえない。

訴訟において、上記事実を立証できるように日頃から準備をしておく必要があります。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

本の紹介2101 劇場化社会#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは、「誰もが主役になれる時代で頭角を現す方法」です。

一芸に秀でることがいかに大切であるかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

タクシーが空を飛ぶ時代です。朝早く起きて、夜早く寝る毎日が正しい日常なのか-それすれもわからなくなってきました。会社を1社しか持っていない経営者が褒められる時代ではなくなってきたのです。とくに若い経営者なら、3社くらい持って当然でしょう。そのくらいの非常識な日常を送ってみませんか?そういう考え方を持っている人たちとつながってみませんか?」(194頁)

何を「正しい」と思い、何を「常識」と感じるかは人によって千差万別です。

安定した人生を望む人もいれば、エキサイティングな人生を望む人もいます。

正解などありません。

どう生きたって人生はあっという間に終わります。

セクハラ・パワハラ85 競輪選手の師匠に対するセクハラ・パワハラに基づく慰謝料等請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、競輪選手の師匠に対するセクハラ・パワハラに基づく慰謝料等請求について見ていきましょう。

損害賠償請求(セクハラ・パワハラ)事件(高松地裁令和5年9月29日・労判ジャーナル142号28頁)

【事案の概要】

本件は、競輪選手であるXが、同じく競輪選手であり、Xの師匠であるBからセクハラ又はパワハラに当たる言動を受け、これらによって、Xが精神的苦痛を受けたほか、レースの欠場や成績低下を余儀なくされた等と主張して、Bに対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料、逸失利益等合計約460万円等を請求した事案である。

【裁判所の判断】

BはXに対し、慰謝料10万円を支払え。

【判例のポイント】

1 Bの言動は、Aの成績が低迷しつつあることなどを指摘するに際し、交際相手との関係について直接的に性的表現を用いて叱責するものであり、当時20歳という若年の未婚女性であったXに対して強い不快感と性的羞恥心を与えるものである上、Xの師匠として大きい影響力を有するにもかかわらず、Xの成績に関連付けて交際相手との性交渉のあり方に干渉し、Xの性的自己決定権を害するもので、その内容は悪質であり、社会的見地から見て、不相当とされる程度に至っていたものと認めるべきであり、違法性が認められるところ、Bの言動は、直接的な性的表現を用いてXの練習への姿勢や成績低下を叱責するものであるが、一方で、反復継続してなされたものとまでは認められず、身体的接触等を伴うものではなかったことを踏まえると、これによりXが被った精神的損害に対する慰謝料は10万円と認めることが相当である。

2 違法性が認められるBの言動は上記のみであることに加え、Xが受診していた心療内科の医師においても、休職や通院の原因となったXの適応障害には複合的な要因が考えられるとの意見も述べるものであるから、Bの言動と適応障害によるXのレースの欠場や成績低下との間の相当因果関係を認めることはできない

レースの欠場や成績低下との間の相当因果関係が否定されたため、上記判例のポイント1記載の慰謝料額にとどまっています。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。

本の紹介2100 凡人起業#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

特別な能力がなくても、日々、人よりも多くの努力を続けられれば、一定の成果を出すことはできます。

途中で投げ出さないことがなによりも大切なのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

スティーブ・ジョブズでさえも、アイデアとは降ってくるものではなく過去から生まれてくるものだとスピーチしています。『未来に先回りして点と点をつなげることはできない。きみたちにできるのは過去を振り返って点と点をつなげることだけだ。だから点と点が、いつかなんらかのかたちでつながると信じなければならない。自分の根性、運命、人生、カルマ、なんでもいいから、とにかく信じるのです。」(208頁)

一見、遠回りに見えることも、いつか過去を振り返ったときにその時の経験が「点」となり、どのように作用するかはわかりません。

自分がやりたいことだけに固執するのではなく、与えられた環境、与えられた条件の下で一生懸命に目の前のことをやってみる。

これこそがいつか来る「connecting the dots」の「dot」となるのです。

「配属ガチャ」なんて言っているうちは、この感覚、この発想にはたどり着けません。

配転・出向・転籍56 医師の配転命令先における義務不存在仮処分等の申立て(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、医師の配転命令先における義務不存在仮処分等の申立てに関する裁判例を見ていきましょう。

市立東大阪医療センター事件(大阪地裁令和5年8月31日・労判ジャーナル141号16頁)

【事案の概要】

基本事件は、Y社によって運営されているaセンターにおいて勤務していた医師であるXが、Y社によるbセンターへの本件配転命令が無効であると主張して、①bセンターにおいて勤務する労働契約上の義務がないことを仮に定めるとともに、②aセンターにおける就労請求権を前提に、aセンターにおける就労を妨害しないことを命じるよう求める旨の申立てをした事案である。
本件は、Y社が、本件申立てを認容した原決定を不服として、原決定の取消し及び本件申立ての却下を求める保全異議を申し立てた事案である。

【裁判所の判断】

債権者と債務者との間の大阪地方裁判所令和4年(ヨ)第10007号地位保全等仮処分申立事件について、同裁判所が令和4年11月10日にした仮処分決定を認可する。

【判例のポイント】

1 上記中期計画には、医療センターとして担うべき役割のうち救急医療について、「a救命救急センターとの連携を強化することで、多数の二次・三次救急患者を受け入れ、重症度、緊急度に応じた適切な医療を提供する体制の確保を図る」旨の記載があるにとどまり、救急医療に携わる医師の異動に係る記載はないし、同じ中期計画の人材の確保と育成に係る箇所や人員配置に係る箇所においても、医師の異動をうかがわせる記載は見当たらない。
以上によれば、Y社の指摘する中期計画の記載は、XとY社の間の勤務内容や勤務場所の合意に係る原決定の認定を左右するものとはいえない。

2 Y社は、複数の看護師がXによるパワーハラスメントや倫理的に不適切な発言をした旨の相談や報告をしていること自体、本件配転命令に係る業務上の必要性を基礎付ける重要な要素であり、原決定はその評価を誤った旨主張する。
しかし、上記相談及び報告に係る疎明資料は、いずれも聴取結果をまとめたメモであるところ、被聴取者等の氏名がマスキングされており、その他に信用性を補う事情も認められないことからすると、これらに依拠してXが問題のある言動をしていたとか、配転の必要性を基礎付けるに足る複数の相談等の疎明があったとはいえない

パワハラ等の事案において、報復を避ける目的で、陳述書や聴取書等で氏名をマスキングした上で証拠として提出するケースがありますが、上記判例のポイント2のように信用性を否定されてしまいますので注意しましょう。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介2099 頭のいい奴のマネをしろ#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

日本マクドナルド創業者の実体験に基づく「マネ」の重要性が説かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

有力者に会いたいと思ったら、”勇気”を出して、直接たずねてみることである。アポイントメントを取らない限り、十中八、九まで玄関払いを食うかもしれないが、1パーセントでも可能性があれば、出かけてみるべきだ。・・・有力者のコネを求める方法を質問してくるぐらいなら、堂々と胸を張って直接ぶつかるだけの勇気を養ってほしいものだ。」(186頁)

私、こういうの全然平気です。

断られても、「ですよね~お忙しいですもんね~」と言えば済む話です。

最初からダメ元ですから、断られたところで落ち込むような話ではありません。

もじもじしているうちに人生は終わってしまいます。

どんどん連絡してお話を聞きに行くべし。

解雇405 普通解雇及び懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、普通解雇及び懲戒解雇の有効性が争点となった事案を見ていきましょう。

ネットスパイス事件(大阪地裁令和5年8月24日・労判ジャーナル141号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結していたXが、Y社に対し、XがY社からされた令和3年1月14日付けでの解雇が無効である旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求をするとともに、労働契約に基づき、本件解雇の翌月から毎月の賃金支払日である10日限り41万円の賃金+遅延損害金の支払請求をする事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件解雇の際に交付した労働契約終了通知書には、解雇理由として、アドテクノロジー製品開発の進捗が停滞しており、開発体制を再検討する旨が記載されているのみであり、Xの能力不足や経歴詐称を指摘する文言はないし、懲戒解雇に係る就業規則の条文の摘示もない
また、本件解雇の約2週間後に交付された解雇理由証明書には、「解雇理由は、新製品開発の停滞により会社業績が悪化し、人員削減が必要になったため」と冒頭に記載した上で、その後の箇所で具体的な理由として、令和2年9月期において赤字決算となり、翌年9月期決算では会社業績がさらに大幅に悪化することが確実な状況であること、経費の大半が人件費であることを指摘した上で、Xが人員削減の対象となった理由として、本件製品専任であったこととプログラミングの基礎の習得が十分でないことが記載されており、以上の記載内容は本件解雇が整理解雇であることを強くうかがわせるものであるといえる。
以上のとおり、本件解雇に伴ってY社からXに対して交付された文書からは、Xに対して企業秩序違反を指摘する記載が全くなく、かえって、整理解雇であることを強くうかがわせる記載があることからすると、本件解雇は普通解雇と解するほかなく、懲戒解雇の意思表示を含むものとは認められない

2 Xの行った作業からプログラマーとしての能力が欠如しているとは認められず、Xに対して業務上の注意及び指導がされていたともいえないから、本件解雇は普通解雇として客観的合理的理由があり、社会通念上相当であるとはいえない。

普通解雇と懲戒解雇は、「解雇」という点では共通していますが、法的性質が異なるため、解雇の意思表示をする際は、どちらの解雇をするのかを意識する必要があります。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2098 自分を超え続ける(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

サブタイトルは、「熱意と行動力があれば、叶わない夢はない」です。

著者は、19歳、日本人最年少で世界七大陸最高峰を制覇された方です。

超えるべきは他でもない「自分」なのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の人生なのだから、誰かに命じられたり、何かに振り回されたりして生きていきたくない。自分の人生を自分でコントロールしたい。そのためには、自分自身で生きていく力をつけなくてはいけない。」(93頁)

私が弁護士になろうと思った理由です。

人生において、「自由」という名の選択肢を持ち続けるためには、誰かや何かに依存せずに自分自身で生きていく力をつけなくてはいけません。

制度や社会や会社や上司やパートナーの愚痴や不満を言ってみたところで、実際は何一つ変わりません。

自分自身に力をつけるほかないのです。

賃金277 従業員の地位を併有するとして、専務執行役への退職金の支払いが認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、従業員の地位を併有するとして、専務執行役への退職金の支払いが認められた事案を見ていきましょう。

学究社事件(東京地裁令和5年6月29日・労経速2540号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の専務執行役であったXが、従業員の地位も併有していた旨主張して、Y社に対し、退職金3999万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、1800万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、その後、Y社の執行役に就任し執行役としての業務に従事したものの、管理本部長等の従業員としての職制上の地位を併有しており、執行役に就任した際、Y社に対し退職届を提出したり、雇用保険の資格喪失手続をしたり、Y社から退職金の支払いを受けたりするなどして従業員としての地位を清算することはなかったことから、従前有していたY社の従業員としての地位に変化はなかったということができる(なお、Y社退職金規程3条1号のとおり、Y社においては退職金規程上も使用人兼務役員の存在が認められているところである。)。
また、Xの業務内容についてみても、塾講師としての業務を続けるなど、実務的で使用者からの指揮監督を受けて行うことが想定される業務にも従事している。さらに、Y社は、XについてA退職金規定に則って計算した金額を退職給付引当金として計上したり、Aの規定に従って退職金の手続をとることを通知したりするなど、Xのことを従業員であると認識していたと推認できる事情もある。なお、Y社は、X以外の執行役についても、Xと同様に退職給付引当金を計上したり、従業員のみが対象となる企業型確定拠出年金の拠出をしたりするなどしており、執行役についても退職金について従業員と同様の取扱いをしているし、Y社においては、執行役に就任した後、従業員の地位に戻る者もいたことなどから、執行役は、従業員と明確に区別されていなかったということができる。
したがって、Xは、Y社において、執行役就任に伴い従業員としての地位を喪失したということはできないから、Y社の従業員であったということができる。

同種の事案は決して珍しくありません。

裁判所がどのような事実に着目して、上記結論を導いているのかをチェックしましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2097 ウルトラ・ニッチ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

サブタイトルは、「小さく始めろ!ニッチを攻めろ!」です。

WAGYUMAFIAを経営する著者がどのようなことを考えてきたのかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

君の年で資本経済に投資する必要はない、なぜ1時間50万円で講演ができるかといえば、発展途上国の経済発展論を英語で、しかも日本人で説明できる人間が僕しかいないからだ。なぜ、そうなったか。それは、君の年に自分に投資をしたからだ」(87頁)

20代、30代前半にどれだけ自己投資をしてきたかが、人生の後半戦における報酬単価に影響を与えます。

残酷ですが、紛れもない事実です。

給料が安いと不満を言っている場合ではないのです。

私のような凡人は、他の人が遊んでいるとき、寝ているときに、寸暇を惜しんで自分の商品価値を高めるための努力を重ねるほかないのです。

やるかやらないか。

ただそれだけの話。