Daily Archives: 2024年4月30日

セクハラ・パワハラ83 上司から受けた身体的暴力に基づく損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、上司から受けた身体的暴力に基づく損害賠償請求に関する事案を見ていきましょう。

大洋建設事件(東京地裁令和5年2月17日・労判ジャーナル141号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、未払割増賃金等の支払を求めたほか、上司から暴言・暴力を受けており、職場環境整備義務に違反した債務不履行又は民法715条1項に基づく使用者責任に基づく損害賠償として100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 従業員兼取締役であるCは、Xに対し、「行けるようであればって文章理解できない?なんでもかんでも電話して聞くんじゃなくて少し自分の頭で考えろバカ!」、「今後あまりバカだと2度と連絡しません」、「よく文面見ろバカ」、「了解しましたじゃなくて今日の予定どうなってるんだって聞いてんだバカ!」とメッセージを送信したものと認めることができ、また、Cは、Xの頭をヘルメット越しに5回くらい小突いたり、頭を直接10回くらい叩いたり、5回くらい足を蹴飛ばしたことがあったものと認めることができるところ、Cのメッセージは、その文面に照らしても、指導注意の過程に行われたものであって、表現方法として適切さに欠け、不穏当であり、Xが不快に感じるものであったことは否定することができないが、その頻度、経緯に照らしても、直ちに業務の範囲を超えたXの社会的名誉、名誉感情を害する程度・内容とまではいえないが、他方、Cにより、複数回にわたって身体的暴力を受けたことについて不法行為が成立し得るものといえ、これに対する慰謝料は、5万円をもって相当というべきであるから、Y社は、Xに対し、従業員を兼ねるCによる不法行為につき、使用者責任(民法715条)に基づいて慰謝料5万円等の支払義務を負う。

慰謝料の金額の相場がよくわかります。

この手の事案は、判決まで行った場合、会社側が支払う金額の多寡よりも、レピュテーションダメージのほうがはるかに大きいのが特徴です。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。