解雇403 配転命令に従わず19日間連続で欠勤した警備員の懲戒解雇が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、配転命令に従わず19日間連続で欠勤した警備員の懲戒解雇が有効とされた事案を見ていきましょう。

ティー・オーオー事件(東京地裁令和5年2月16日・労経速2531号35頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結し警備員として勤務していたXが、Y社から令和3年4月5日付けで配転命令を受けたこと、同年5月7日付けで懲戒解雇されたことに関し、本件配転命令及び本件解雇がいずれも無効である旨主張して、Y社に対し、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②本件雇用契約に基づき本件配転命令以降(令和3年4月1日から本判決確定の日まで)の賃金月額40万4868円+遅延損害金の支払、③本件雇用契約に基づき業績一時金1万8000円(令和3年9月から本判決確定の日まで毎年7月及び12月)+遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、有効な本件配転命令を拒否し、正当な理由なく令和4年4月16日から同年5月7日までの22日間、勤務シフト上の労働日としては19日間連続で欠勤したものということができる。
雇用契約においては、出勤して労務を提供するということが最も基本的かつ重要な債務であるから、Xは重大な債務不履行をしたというべきであり、これにより、Y社が代替要員の確保に奔走するなど迷惑を被ったことは当然であり、企業秩序を著しく害する行為であるといえる。その期間についても、勤務シフト上の労働日単位で見ても19日連続というように長期間であるし、Xは、Y社から書面による警告を受けながらも、Y社に対し、自宅待機にした上で休業手当を支払うように要求していたことなどから、本件解雇をせずとも、その後、欠勤を続けていた可能性が極めて高いというべきである
したがって、Xは、少なくとも、就業規則43条2号(出勤常ならず改善の見込みのないとき)、7号(第16条から第21条まで、又は第36条、第37条、第53条の規定に違反した場合であって、その事案が重篤なとき)及び9号(その他前各項に準ずる程度の不都合な行為を行ったとき)の懲戒解雇事由に該当するといえる。また、本件解雇は、懲戒解雇として、客観的に合理的な理由を有するということができる。

2 Xは、本件配転命令を拒否し、正当な理由なく令和4年4月16日から同年5月7日までの22日間、勤務シフト上の労働日としては19日間連続で欠勤しており、長期間にわたり重大な債務不履行をしたものといえる。また、Y社は、本件解雇に先立ち、Xに対し、2度書面で出勤を命じるとともに従わない場合は処分する旨の警告をしており、手続的にも適正である
他方で、Xは、Y社が本件配転命令を撤回したり配転先を再度検討したりする旨を一度も述べていないにもかかわらず、Y社に対し、自宅待機にした上で休業手当を支払うように要求しており、働かずして支払を受けることを画策していたと思われるし、Y社が新しい配転先を検討している間自宅待機になった旨通知書に虚偽の記載をするなど、自身の要求を押し通そうとする姿勢が顕著であり、情状面も悪い。Xは、本件解雇をされなくても、その後、欠勤を続けていた可能性が極めて高いというべきである。
したがって、本件解雇は、懲戒解雇として、社会通念上相当であると認められる。

配転命令拒否を理由とする解雇の事案においては、前提となる配転命令の有効性がまずは判断され、仮に有効であると判断された場合には、かかる命令に反したことを理由とする解雇の相当性が問題となります。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。