Monthly Archives: 2月 2024

本の紹介2079 なめらかなお金がめぐる社会。あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯に書かれている「『お金がすべて』の社会のその先に。」という発想が本全体に流れています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

最近流行りのミニマリズムも明らかに商業主義、成長を続ける資本主義への反動だ。ミニマリズムとは必要最低限のもの以外は持たず、モノに対する執着から距離を置くことで自分にとって本当に大事なものを浮かび上がらせる生き方。」(36頁)

モノに対する執着がないと、お金の使い道があまりありません。

ほしいものがないからです。

時計はしないし、車は動けばいいし、服はユニクロだし、家は賃貸だし。

モノが溢れかえっている生活よりも必要最低限のモノだけがある生活のほうが私には合っています。

解雇404 解雇の意思表示の存否及び離職証明書の不実記載(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、解雇の意思表示の存否及び離職証明書の不実記載に関する裁判例を見ていきましょう。

ビッグモーター事件(水戸地裁令和5年2月8日・労判ジャーナル140号2頁)

【事案の概要】

本件は、自動車及び自動車部品販売業並びに自動車修理、解体業及びレッカー作業等を目的とするY社に雇用されていたXが、Y社から解雇されたが、本件解雇は違法であり、また、Y社が離職票に不実の記載をしたことにより国民健康保険税の軽減を受けることができなかったとして、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、損害金合計452万5959円等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求一部認容(Xの請求額452万5959円を認容)

【判例のポイント】

1 Y社は、解雇の意思表示について否認しており、本件解雇に客観的合理的理由があり、社会通念上相当であることについての具体的主張をしていない。そして、Xが、他の従業員に自分の業務を手伝わせたり、車検の台数制限などを行ったりしていたという問題のある言動があったとは認められず、XとY社との間の雇用契約を直ちに一方的に解消し得る解雇事由があるとは認められないこと、Dエリアマネージャーは、Xについて解雇が認められるとは思っていなかったことに照らせば、本件解雇は、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、違法である。

2 Xは、本件解雇により離職したものであり、「非自発的理由による失業」であり、Xは、Y社に対して、解雇されたとの認識を明示していたにもかかわらず、Xに、離職証明書に記載する離職理由について何ら確認することなく、本件離職証明書に「労働者の個人的な事情による離職」であり、「離職理由に異議」がないとの虚偽の記載をしたものと認められる。
事業主が離職証明書について虚偽の記載をした場合について、罰則が設けられているものであること(雇用保険法83条1項1号)に照らしても、上記のY社による虚偽記載が、Xに対する違法な行為であると認められることは明らかであり、Y社に上記記載が違法であることについての認識があったものと認められる
したがって、Y社による本件離職証明書の不実記載は、Xに対する不法行為に当たる。

上記判例のポイント2については注意が必要です。

このような事態にならないように慎重に手続きを進めることが求められます。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2078 年収1億円は「逆」からやってくる#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

さまざまな成功者を観察した内容が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

夢に義務感を発生させないようにするには、自分にとってそれが『しなければならない』ことなのか『やりたい』ことなのかを常にチェックすることです。」(46頁)

人生の中でいかに「must」と減らし「want」を増やすか、という発想はとても有効だと思います。

本当はやりたくないんだけど、やらないといけないからやっているというルーティンをどれだけなくせるか。

それによって生まれた時間を「want」にあてることができるわけです。

時間は有限です。

そして、人生も。

労働時間102 変形労働時間制は無効であるとして、未払割増賃金等支払請求が一部認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、変形労働時間制は無効であるとして、未払割増賃金等支払請求が一部認められた事案を見ていきましょう。

サカイ引越センター事件(東京地裁立川支部令和5年8月9日・労判ジャーナル140号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、Y社において引越運送業務に従事していたXらが、時間外労働に係る割増賃金等が未払であると主張し、Y社に対し支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 本件就業規則において現業職の始業・終業時刻シフトの組合せの考え方、公休予定表の作成手続及び周知方法等の定めはなく、D支社は、労使協定上、いずれのシフトを採用するか明示せず、公休予定表ないし出勤簿においてもシフトの記載は見当たらないところ、時期によって異なるシフトを採用し、シフトAからシフトBへの移行日も全現業職において一律ではなかった上、顧客の引っ越しの関係上個別の従業員ごとに早出・遅出のシフトも組まれていたというのであり、また、現業職の労働時間が、書面により始業・終業時刻をもって特定されていたと評価することはできず、さらに、D支社においては、各月の30日前までに従業員の公休予定表を作成・周知する取扱いが徹底されておらず、公休予定表の作成後も、従業員らの申出以外の理由により、公休予定日が変更されることがまれではなかったことに照らすと、各月の30日前までに公休予定表が作成される形がとられていたとしても、実態として、各期間の労働日が特定されていたと評価することはできないといわざるを得ないから、本件請求対象期間におけるD支社の変形労働時間制の定めは、労働基準法32条の4の要件を充足しないものとして無効である。

本件同様、変形労働時間制の有効要件を満たさず、無効と判断されているケースが後を絶ちません。

安易に同制度を導入することは控えるべきでしょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

 

本の紹介2077 自分を成長させる極意#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

いかにして身体・感情・知性・精神のレベルを向上させるかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

日常の生活習慣に『自分の価値観』を反映させる
これも、多くの人にとって難しい課題である。たいていの人が恐ろしいペースで生活しており、『何に拠って立つべきか』『自分は何になりたいのか』、ゆっくり考えることがほとんどない。その結果、外部からのさまざまな要求に応えるだけの生活に終始している。」(135頁)

そう。

みなさん、毎日忙しすぎるのです。

新しいことに挑戦する気も起きない程に、毎日やることが多くないですか?

もうそれどころではないですよね(笑)

まずはその超多忙な生活から抜け出すことが肝なのですが、実際のところ、至難の業です。

一度、リュックの中に入れたら、そう簡単に取り出せないものばかりだからです。

「自らの自由や時間を奪うありとあらゆるモノを、極力、リュックに入れない」ということがいかに大切か、ということなのだと思います。

労働時間101 過半数代表者の選出に違法があるとして、変形労働時間制・36協定が無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、過半数代表者の選出に違法があるとして、変形労働時間制・36協定が無効とされた事案を見ていきましょう。

未払割増賃金等支払請求事件(釧路地裁帯広支部令和5年6月2日・労判ジャーナル140号32頁)

【事案の概要】

本件は、社会保険労務士であるBと雇用契約を締結して就労していたAが、Bに対し、①労働契約に基づき、平成31年4月から退職した令和3年4月までの時間外割増賃金等の支払、②不法行為に基づき、有効な労働基準法36条に基づく協定を欠き時間外労働を命ずる適法な権限がないのに、労働基準法32条及び同法36条に違反してBがAに対し違法な残業命令を繰り返して勤務をさせてきたことに対する慰謝料150万円等の支払、③労働契約に基づくBの私生活時間配慮・職場環境調整義務違反による慰謝料の支払、④時間外割増賃金に係る付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 過半数代表者の選出手続は、法に規定する協定等をするものを選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法によらなければならない(労働基準法施行規則6条の2第1項第2号)ところ、Bの事業所においては、平成16年に1年単位の変形労働時間制を採用した際に、従業員の間で従業員代表としてCを選出する話し合いが持たれた後は、従業員間で話し合いがされないままCが従業員代表としてBとの間で1年単位の変形労働時間制についての協定を締結しており、これによれば、前記の協定に先立って、選出目的を明らかにした投票、挙手等の方法によるCを従業員代表とする民主的な手続は行われていないのであるから、前記各協定届には、労働基準法施行規則6条の2第1項所定の手続によって選出された者ではない者が、Bの労働者の過半数代表者として署名押印しているといわざるを得ないから、Bにおける1年単位の変形労働時間制は無効である。

2 確かに、36協定が無効となれば、使用者は労働者に対して時間外労働を命ずる労働契約上の根拠を欠くことになることから、時間外労働を命ずる業務命令権の行使は違法となるというべきであるが、BにおけるA以外のいずれの労働者もCについて労働者代表としての適格性を否定する者はおらず、仮に従業員代表を選出する手続が行われていれば、Cが従業員代表に選出されていた可能性が高いこと、Aも36協定がCによって締結されていることをBの事業所における勤務開始後数年以内に認識しながら、これに対して異議を述べることをしていなかったこと、法定外労働に対しては、時間外割増賃金の支払が命じられることになることに照らせば、36協定が無効と判断されたとしても、その違法性は、慰謝料を命ずべき違法性があるとは認められない

変形労働時間制の無効例が後を絶ちません。

「例外規定の厳格解釈」がここでも影響しています。

労使協定締結時の過半数代表者の選出方法には気を付けましょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2076 イヤなやつほど仕事がデキる#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

いかに多数派に同調しないことが大切であるかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事がつまらないのは、誰かの敷いたレールの上を歩いているからだ。周囲から疎まれてもいい。イヤなやつだと思われてもいい。ルールを破って創造的に生きろ。

これだけ自由気ままな生活をしていると、もはや誰かの敷いたレールの上を歩く人生はとても送れません。

仮にそれが「安定した生活」だとしても。

目的地も自由、行き方も自由、そんなエキサイティングでスリリングな人生を送るほうが私には合っています。

好きなように選んで、やりたいようにやって、生きたいように生きたいのです。

不当労働行為313 住宅手当支給区分の変更が不当労働行為にあたるか(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、住宅手当支給区分の変更が不当労働行為にあたるかが争われた事案について見ていきましょう。

ENEOS(旧エクソンモービル・住宅手当変更)事件(中労委令和4年6月1日・労判1295号103頁)

【事案の概要】

本件は、配偶者死亡による「既婚者」から「単身独立生計者」への住宅手当支給区分の変更が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 会社には、支給区分上の「扶養家族を有する者」について適用する特例措置を定めた運用ルールが存在する。運用ルールとは、独身の非管理職従業員で扶養者を有する者について、その被扶養者が就職などの理由により扶養から外れた場合、当該従業員が元被扶養者と同居する場合に限って、「単身独立生計者」ではなく「扶養家族を有しない既婚者」扱いとする、というものである。
運用ルールは、Xのような、「扶養家族を有しない者」に該当していた者が配偶者を亡くして、元被扶養者と同居しているケースを想定したものではなかった。しかし会社は、Xに配慮し、運用ルールの趣旨に鑑み、Xのケースにもこれを適用してよいと判断し、「元被扶養者と同居して生計を共にする」という要件で、「既婚者」から「単身独立生計者」に変更をしないで「既婚者」の区分のまま住宅手当の支給を認めることとした(運用ルールの取扱い)。
このような運用ルールの取扱いは、運用ルールの趣旨を従業員に有利となるように更に推し進めるものであり、合理的なものといえる。
運用ルールの取扱いを多くの従業員に統一的に適用する以上、会社が「生計を共にする」という要件を、住民票により判定できる「世帯」を基準として判断することは社会通念に合致しており、会社の上記判断は不合理なものとはいえない。

特にXに対して不利益を当たる意図・目的が客観的に認められないことから、不当労働行為該当性が否定されています。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介2075 己を、奮い立たせる言葉。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

タイトルのとおり、著者を奮い立たせた言葉が紹介されています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

できるか、できないかの最初の分岐点はやるかやらないかだ。」(40頁)

ちなみに第2の分岐点は、やり続けるか途中でやめてしまうか、です。

何でもそうですが、継続しなければ、身につきません。

逆に言えば、継続できれば、たいていのことはできるようになります。

それ以上でもそれ以下でもありません。

不当労働行為312 組合員がグループLINEを使用して社内の友人に組合への加入を勧誘するメッセージを送信したこと等を理由として減給の懲戒処分としたことが不当労働行為にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合員がグループLINEを使用して社内の友人に組合への加入を勧誘するメッセージを送信したこと等を理由として減給の懲戒処分としたことが不当労働行為にあたるとされた事案を見ていきましょう。

カンプロ事件(茨城県労委令和4年10月20日・労判1295号101頁)

【事案の概要】

本件は、組合員がグループLINEを使用して社内の友人に組合への加入を勧誘するメッセージを送信したこと等を理由として減給の懲戒処分としたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Xによる本件グループLINEへの本件メッセージの送信は、組合への加入勧誘を行う目的でなされたものであり、その内容が事実に反している部分があるが、Xに殊更、虚偽の事実を送信したとの認識がなく、また、Y社の信用・信頼を失墜させることについて、あえて意図した証拠はない。加えて、本件メッセージが拡散した事実は認められない。また、本件処分は、懲戒処分としては重すぎるものと判断せざるを得ず、懲戒処分は、Xに対する不利益取扱い(労組法7条1号)に当たる。

2 本件処分がなされることは、組合員はもちろん、従業員が組合への加入や何らかの関与を行った場合には、本件処分のような懲戒処分等がなされるおそれを抱かせ、ひいては、従業員の組合への不加入、組合員の脱退などの組合の活動・運営を阻害するおそれがある。よって、本件処分は、XによるY社従業員に対する組合への加入勧誘行為に干渉するものであり、組合に対する労組法7条3号の支配介入に当たる。

上記命令のポイント1のような事情がある場合、会社としては、何らかの懲戒処分を検討することは理解できるところですが、減給は重すぎる(相当性に欠く)という判断です。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。