おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。
今日は、友人の依頼で、荷物の搬入・搬出作業等を行った者の労働者性が否定された事案を見ていきましょう。
国・春日部労基署長事件(東京地裁令和5年2月16日・労経速2528号34頁)
【事案の概要】
Xは、労働者としてコミックマーケットにおける同人誌販売のため荷物を運搬した際に急性腰痛症を発症したと主張して、春日部労働基準監督署長に対し、労災保険法に基づき、休業補償給付の支給を請求したところ、処分行政庁は、原告は労働基準法及び労災保険法上の労働者には該当しないとして、令和2年8月6日付けで休業補償給付を支給しない旨の処分をした。
本件は、Xが、Yに対し、本件処分に違法があるとして、その取消しを求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 XとBは、専門学校時代の同級生であり、本件コミックマーケット開催当時は友人関係にあったこと、Xが過去にコミックマーケットに自ら販売者として参加していた際には、Bと相互に商品販売の手伝いをする関係にあったこと、Xが、コミックマーケットの販売者としての参加をやめ、Bの依頼を受けてBの商品販売のための荷物の搬入・搬出、ブース設営・片付け及び販売補助等の作業を行うようになった後も、Bは、Xに対し、上記各作業の対価として金銭を交付したことはなく、当日のXの朝食、昼食及び夕食の代金を負担したにすぎず、その金額も2000円程度であったことからすれば、Xは、Bとの間の友人関係に基づき、Bの商品販売の手伝いをし、Bは、その謝礼として当日のXの食事代を負担していたものと認められ、食事代の負担ゆえにBから依頼されたことをXが断れない関係にあったとは認め難い。
また、BからXに対するブース設営依頼のメッセージは「会場前で下ろすから、先に行って設営しておいてください。よろしくお願いします。」といった丁寧な言葉遣いのものであって、ブース設営の見本についてのやりとりにおいても、BがXに作業を強制する趣旨の伝達をした事実はなく、当日にXがBに依頼されて行った作業(荷物の搬入・搬出、ブース設営・片付け及び販売補助等)は、作業負荷が強いものではなく作業密度も低いものであったことからしても、Xが、Bから食事代を負担してもらうがゆえに、Bの依頼を断れずに上記各作業を行ったとは認め難い。
労働者性に関する判断要素に添って事実認定がされています。
裁判所がどの事実を拾い、どのように評価しているかを見ると勉強になります。
労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、判断に悩まれる場合には、事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。