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今日は、配転命令の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。
摂津金属工業事件(大阪地裁令和5年3月31日・労判138号14頁)
【事案の概要】
本件は、平成元年にY社に雇用され、令和2年2月当時、大阪府守口市に所在する本社のシステム課に勤務していたXが、同年4月1日付けでC工場製造部製造一課配属検査担当としての勤務を命ずる旨の配転命令を受けたことにつき、Y社に対し、本件配転命令は、Xの職種をコンピューターの構築及び管理に限定する旨の労働契約上の合意に反し、又はY社の配転命令権を濫用するものであるから無効であるとして、C工場検査課に勤務する労働契約上の義務がないことの確認を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Y社は、比較的業務量に余裕があり、今後は若手従業員の力も必要となってくる部署である本社システム課から、欠員補充が急務となっているC工場検査課にXを配置転換するために本件配転命令を発したのであって、本件配転命令には、その人選も含めて合理性があり、業務上の必要性が認められるというべきであり、また、本件配転命令が、Xを退職に追い込むような不当な動機・目的に基づくものであったとはいえず、そして、Y社は、Xの負担に配慮して、手当の支給に関する特別措置を講じているものであり、Xの妻であるNの治療に具体的な支障が生じているとの事実も認められないことにも鑑みれば、Nの健康状態の点に関し、本件配転命令により、Xに通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じたとはいえず、また、本件配転命令によりXの父であるPの介護等に影響が出るものではないこと、Y社がXの帰省費用を負担するなどして一定の配慮をしていること等を考慮すれば、Pの健康状態に関し、本件配転命令により、Xに通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じたとはいえないこと等から、本件配転命令がY社の配転命令権を濫用した無効なものであるとはいえない。
配偶者、子、両親等の健康問題等が存在する場合、本件同様、配転命令の要件である「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」の有無が問題となりますが、これまでの裁判例の傾向を見る限り、かなりシビアに判断されています。
微妙な事案において、配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。