Daily Archives: 2023年11月17日

同一労働同一賃金25 正社員と期間の定めのある臨時雇員との賞与に関する労働条件の相違が不合理ではないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、正社員と期間の定めのある臨時雇員との賞与に関する労働条件の相違が不合理ではないとされた事案について見ていきましょう。

ロイヤルホテル事件(大阪地裁令和5年6月8日・労判ジャーナル139号23頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある臨時雇員雇用契約を締結して勤務していたXが、Y社との間で期限の定めのない雇用契約を締結している社員との間で、賞与に係る労働条件に相違があったことは短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条に違反するものであると主張して、Y社に対し、不法行為に基づき、令和2年の賞与相当額12万3030円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、基本的に上期及び下期に正社員に対して賞与を支給しており、少なくとも平成28年度から令和元年度まで一定の支給率を維持している上、新型コロナウィルス感染拡大によりY社の業績が大幅に落ち込んだ令和2年度においても、支給率を下げながらも一定額の賞与を支給したことが認められ、正社員の賞与がY社の業績と必ずしも連動するものではなかったことが認められる。
正社員に対して支給される賞与には、労務の対価の後払いや一律の功労報償の趣旨のほか、正社員としての職務を遂行し得る人材を確保してその定着を図る目的があったと認めることができる。
これに対して、臨時雇員に対する賞与は、平成20年から同22年まで支給されたことはあったが、その額は数千円程度にすぎず、それ以降10年以上にわたり支給されたことがなかったことからすると、恩恵的給付としての性格が強いものであったということができる。
また、臨時雇員の賞与には、勤労意欲の向上の趣旨があったにしても、臨時雇員としての職務を遂行し得る人材を確保してその定着を図る目的があったとまでは認めることができない

2 正社員の業務内容は、臨時雇員と比較して、広範かつ責任を伴うものであり、臨時雇員が正社員の業務の一部を行うことはあっても、限定的であったということができる。

3 Y社において、正社員は人事異動が命じられることがあったのに対し、臨時雇員は特別な事情がない限り人事異動が命じられることはなかった。

4 Y社においては、本件登用制度が設けられ、一定の登用実績もあったことからすると、必ずしも臨時雇員と契約社員及び正社員の区分が固定されたものではなかったと認めることができるから、本件登用制度は「その他の事情」として考慮するのが相当である。

考慮要素自体はこれまでの裁判例と異なるものではありません。

労働力不足が今後ますます深刻化する中で、はたしてこのような「格差」をどこまで許容し続けるのかは、法律論とは別に考える必要があろうかと思います。

同一労働同一賃金の問題は判断が非常に悩ましいので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。