おはようございます。
今日は、整理解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。
リビングエース事件(大阪地裁令和5年2月3日・労判ジャーナル138号34頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、Y社から整理解雇され、Xの地位確認等請求を認容する労働審判が確定した後、再度、Y社から整理解雇されたため、本件解雇は解雇権の濫用に当たり無効である旨主張し、雇用契約に基づき、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、未払賃金等の支払を求め、また、本件労働審判が確定したにもかかわらず、Y社がXの職場復帰を認めず、本件解雇をし、あるいは未払賃金の支払を拒否したのは違法である旨主張して、共同不法行為に基づき、Y社、代表取締役B、元代表取締役Cに対し、連帯して、慰謝料100万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
地位確認請求認容
損害賠償請求棄却
【判例のポイント】
1 本件解雇当時、Y社の経営状況が悪化して人員削減が必要な状況にあったとはいえず、その他これを認めるに足りる証拠はなく、また、Y社は、経費削減について最大限できることはやり尽くした旨主張するが、かかる事実は認められず、役員報酬等の減額が十分といえるかには疑問があり、さらに、Bは、本件解雇をするに当たって雇用調整助成金が受給可能であるかどうかの検討をしていないことからすると、Y社の解雇回避努力が十分であったとはいえず、他方、本件解雇当時におけるY社の従業員は、Xのほかに、代表取締役であるBと女性事務員の2名であったことからすると、人員削減の必要性が肯定される限りにおいて、Xを解雇対象とすることが不合理であるとまではいえないから、本件解雇につき人選の合理性があったこと自体は否定できないが、Y社は、先行解雇が無効であることを前提とする本件労働審判に対して異議申立てをせずにこれを確定させており、本件労働審判の内容を履行すべき立場にあったところ、その後、民事調停を申し立て、民事調停が不成立となるや、Xに対して何ら事前説明をすることなく本件解雇をするに至ったものであり、本件解雇の手続が相当であったとは認められないから、客観的に合理的な理由があったとはいえず、解雇権を濫用するものとして無効である。
2 本件解雇は無効であるというべきであるが、本件解雇に至る経緯等を考慮しても、Y社による復職拒否及び未払賃金支払拒否が独自の不法行為を構成するとは認められず、あるいは、Xに上記未払賃金が支払われることによってもなお填補されない精神的損害が発生したとは認められないから、XのY社らに対する不法行為に基づく損害賠償請求には理由がない。
整理解雇を行う場合、一般的には経営がかなり逼迫した状況であるため、手順や手続を無視してしまうことがありますが、有効要件がかなり厳しいので、多くの事案で無効と判断されています。
整理解雇を行わざるを得ない場合には、事前に顧問弁護士に相談することが大切です。