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今日は、退職合意の存否に関する裁判例を見ていきましょう。
大央事件(東京地裁令和4年11月16日・労判ジャーナル138号42頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、Y社との間の労働契約に基づき、Y社との間で退職に合意したことはないと主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、Xは、令和2年12月28日までY社で勤務したものの、Y社は、同月29日以降、Xを退職したものと扱って勤務できなかったと主張して未払賃金及び未払賞与等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
退職合意無効確認請求認容
未払賃金等請求認容
未払賞与請求棄却
【判例のポイント】
1 ①退職届などのXの退職の申出を記載した書面は作成されていない上に、X自身は退職の申し出をしたことはない旨を陳述していること、②Y社自身の供述によっても、「それでも出ろって言うなら辞めます」「どうしても出なきゃいけないんであれば、自分は辞めます」とのXの発言は、年末年始の休暇取得を認めるか否かのやり取りのなかでされた発言であって、少なくとも確定的にY社を退職する旨の意思表示とはいえないこと、③Xは、令和2年12月27日に、Y社に対して解雇通知書の交付を求めているとともに、令和3年1月7日には、代理人を通じて、Y社を退職する意思はない旨を伝えていることからすると、Y社代表者が令和2年12月初旬ころにXから退職の申し出を受け、これを了承したとまでは認められない。
2 Xは、令和3年2月1日、A社に就職したことが認められるところ、XはすぐにY社に復職できる見込みがあったわけではなく、家族がいるため収入のない状態のままでいるわけにはいかないことから、同社に就職したことが認められるから、Xは、Y社において就労する意思を喪失したとは認められない。
上記判例のポイント1の事情からすれば、退職の意思表示を認定することは難しいですね。
また、上記判例のポイント2では、再就職をした場合に問題となる復職の意思の有無について判断されていますが、他の裁判例を見ても、必ずしも再就職したからといっても当然に復職の意思は否定されていませんので、この点はしっかりと押さえておきましょう。
日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。