賃金265 記者の未払割増賃金等請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、記者の未払割増賃金等請求に関する裁判例を見ていきましょう。

埼玉新聞社事件(さいたま地裁令和5年5月26日・労判ジャーナル137号10頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員Xが、時間外労働に対する未払割増賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Y社は、Y社の給与規定に定められた役職手当は、定額時間外手当に当たる旨主張するが、Y社の就業規則及び給与規定において、役職手当が時間外労働に対する対価であることをうかがわせる規定は見当たらないから、Y社の就業規則及び給与規定の文言や位置付けから、役職手当が時間外労働に対する対価であるものと評価することはできない。

2 Y社は何十年にもわたり、役職手当を定額時間外手当と運用し、Y社の従業員においても、労働組合においても、そのように理解し、Y社の運用を受け入れてきた旨主張するが、平成30年頃から、過去の残業代の未払問題の解決と今後の実残業制度の導入が検討され、役員と従業員らとの個別面談が行われたこと、Y社は役職手当は時間外労働の対価の性質を有することを前提として上記の検討を行ったこと、大部分の従業員がY社の提案に異議を述べなかったことが認められるが、異議を述べなかった従業員らが、Y社が経営危機に陥っているとの説明を踏まえて、Y社の存続を願ってY社の提案に応じる判断をしたことは十分に考えられ、Y社が提案した解決方法に従業員らが異議を述べなかったことにより、役職手当が時間外労働手当の性質を有することが長年にわたり受け入れられていたとのY社の主張が裏付けられるとは必ずしも言えず、そして、従業員がY社の各提案に同意したとは認められないのであって、給与規定の改定が行われないままとなっている状況下で、Y社の提案に他の従業員の同意を得られたとしても、従業員・Y社間の労働契約における労働条件がY社と従業員以外の従業員との間の同意内容に沿ったものとなるということはできないから、Y社が従業員に対して支払った役職手当を、時間外労働に対する既払い額として控除することはできず、また、従業員の割増賃金の基礎となる賃金に役職手当を含めることとなる。

いまだに固定残業代について有効要件をあまり意識せずに支払っている会社が散見されます。

固定残業代の有効要件は決して難しくないので、弁護士等に相談をして適切に運用してくださいませ。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。