おはようございます。
今日は、36協定の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。
医療法人社団菅沼会事件(東京地裁令和4年12月26日・労判ジャーナル135号46頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に雇用されているXが、Y社に対し、Y社が、Xの加入する労働組合が申し入れた過半数代表者の選出手段に関する協議等の要求を拒絶し、Xを過半数代表者の選出手続から排除し、Xがは関数代表者として選出されたにもかかわらずその地位を否定し、Xに無効な労使協定に基づく残業を指示し、もってXの権利を侵害したと主張して、不法行為に基づく損害賠償金約70万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件クリニックの従業員の過半数で組織する労働組合でなければ、Y社との間で、本件クリニックの従業員の36協定を締結する権限はないから、X以外の本件クリニックの従業員の加入者の有無・加入者数が明らかではなかった本件組合との間で、団体交渉事項とされていなかったにもかかわらず、Y社が、本件クリニックの過半数代表者の選出について事前に協議する義務はないというべきであるから、Y社がこれを拒否する旨の回答をしたことに違法はないというべきである。
2 過半数代表者の選出手続は、「協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法」によらなければならないが(労働基準法施行規則6条の2第1項2号)、使用者において立候補者の一般募集を行うことが義務付けられているものではなく、また、労働者又は労働組合からの要求によってそのような義務が生じるとも解されないから、Xが、第2回団体交渉で、本件組合との事前協議を行わないことに抗議したことなどをもって、Y社において一般募集を行う義務が生じたということはいえず、Y社が令和元年の過半数代表者の選出に当たり立候補者の一般募集を行わなかったことが不法行為を構成するとは認められない。
労使協定締結時の過半数代表者の選出方法については、一般的なルールが定められていますので、留意点をしっかりと押さえてながら進めていきましょう。
日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。