Monthly Archives: 8月 2023

本の紹介2016 サードドア 精神的資産のふやし方#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から3年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「いつだって、そこにある『成功への抜け道』」と書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

君が何者であるかは、君の持っている能力ではなく、君の選択によって決まるんだよ」(434頁)

多くの人が「能力の差」だと思っていることの大半は、実際のところ、「選択の差」にすぎません。

毎朝、何時に起き、どのようなルーティンをこなしているか。

夜寝る前に何をしているか。

休みの日をどのように過ごしてきたか。

ただその差に過ぎません。

労働時間95 夜勤開始前の労働時間該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、夜勤開始前の労働時間該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

TSK事件(東京地裁令和4年12月3日・労判ジャーナル135号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結して物品の検品及び警備業務等に従事していたXが、Y社に対し、未払時間外割増賃金等の支払を求め、年次有給休暇の時季指定権を行使し、40日の年休を取得したにもかかわらず、そのうち20日分に相当する賃金の支払を受けていないとして、賃金19万円等の支払を求め、労働基準法114条に基づく付加金約785万円等の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Xは、日勤時の昼休憩を取るときは、制服を着たまま、駐車場に停めている自らの車で休憩を取り、車内で食事などをしていたところ、夜勤開始前時間においても、駐車場に停めている自らの車の中で食事をしていること、本件施設の構内に出ることも可能であったことが認められ、X自身も当法廷において、「仕事してもしなくてもいい時間」である旨供述していることに照らせば、夜勤開始前時間においては労働からの解放が保障されていたというべきであるから、夜勤開始前時間において、実質的にXに労働契約上の役務の提供が義務付けられているとはいえず、夜勤開始前時間はXが使用者の指揮命令下に置かれているとはいえず、労働基準法上の労働時間に当たらない。

この内容からすれば、指揮命令下に置かれていたとは評価できませんね。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2015 伝え方の極意#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

「ラリー・キング・ライブ」で有名なラリー・キングさんの本です。

50年間に5万人と対談した著者が、上手な会話のしかた、作法を教えてくれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ある人が友達から長い手紙をもらった。その手紙の最後にはこう書かれていた。『長い手紙でごめんなさい。短い手紙を書く時間がなかったのです』実際、簡潔な文章を書くのは難しいものだ。・・・しかし、手紙に限らず、どんなコミュニケーション方法を取る場合でも、事前に少し時間を取って、話を簡潔にまとめておくのは大切なことである。」(165~166頁)

話し方、話す内容というのは、いわばその人の知性や個性の発露ですので、ある日突然、話し方や話す内容を変えることは不可能です。

話す長さもまた例外ではありません。

とりとめのない話をひたすら聞かされる聞き手の苦痛たるや・・(笑)

聞いているふりをするのも大変です。

話は手短に。

悦に浸って延々と武勇伝を語っている場合ではありません。

解雇398 飲酒を伴う歓迎会等での入社内定者の発言を理由とする内定取消が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、飲酒を伴う歓迎会等での入社内定者の発言を理由とする内定取消が有効とされた事案を見ていきましょう。

兼松アドバンスト・マテリアルズ事件(東京地裁令和4年9月21日・労経速2514号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社から、採用内定を得て、その後、Y社から内定を取り消されたXが、Y社に対し、次の各請求をする事案である。
(1)主位的請求
Xが、本件内定取消しは客観的に合理的な理由を欠き社会通念上の相当性を満たさない無効なものである旨主張して、Y社に対してする次の各請求
ア 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
イ 労働契約に基づく次の各金員の支払請求
(ア)未払賃金
(イ)賞与
(2)予備的請求
Xが、本件内定取消しは客観的に合理的な理由を欠き社会通念上の相当性を満たさない違法なものであり、これによって採用に係るXの期待権が侵害されたと主張して、Y社に対してする、不法行為に基づく損害賠償314万6880円+遅延損害金

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ①EやFを呼び捨てにしたこと(二次会)、②Y社への入社理由について、ついでに受けただけである、たまたま採用までのスピードが早かったため、入社することにした旨の発言をしたこと(二次会。同旨の発言を本件会食前にもしている。)、③Eに対して、「やくざ」、「反社会的な人間に見えるな」と述べたこと(二次会から三次会への移動中)については、いずれもY社従業員(上司や先輩に当たる。)に対して礼を失する行為であり、特に上記③の「やくざ」、「反社会的な人間」との表現は侮辱的なものであって、同僚に対してする発言として著しく不穏当で不適切であるというべきである。Xがかかる発言をしたことは、それが飲酒の上でなされたものだとしても、従業員同士の強調に反し、職場の秩序を乱す悪質な言動であるということができる。

2 社内ルールやコンプライアンスを遵守する姿勢は、Y社の従業員である以上、当然に必要な資質であるといえることに加え、本件支店は18名で構成される小規模な事業所であり、業務の正常な遂行のために従業員同士の協調性が求められること、特に営業職においては、社内外と円滑なコミュニケーションを図る協調性が重要かつ最低限必要な能力として求められる上、取引先との関係性を円滑にするために月に数回の会食の場に参加することがあることから、会食の場での社会人としての最低限のコミュニケーション能力、礼節が求められること、Y社においては、上記資質等をXが備えているものとの判断の下、本件採用内定をしたことがそれぞれ認められ、これらからすると、Xの前記言動は、これらの基本的な資質をXが欠いていたことを示すものであって、かつ、Y社はかかる資質の欠如を本件採用内定時には知り得なかったといえるから、これらの理由に基づいて本件採用内定を取り消すことは、XがB支店長及びEに対して架電して謝罪したことを踏まえても、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるというべきである。

どうしちゃったのでしょう。社交辞令が言えない方なのかもしれませんね。

いずれにせよ裁判所の判断が上記のとおりで安心しました。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2014 一流の魅せ方#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

著者は、元国会議員秘書、選挙戦略家の方です。

どのような話し方、身だしなみ、気づかいにすれば人に好かれるのか、ということが書かれています。

印象がいい人というのはちゃんと理由があることがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

大切なのは、『自分が、どうなりたいのか』です。誰かに期待される自分を演じていられるほど人生は長くありません。」(205頁)

親の期待、先生の期待、上司の期待・・・

「期待」なんて、その人がこうあってほしい、こうあるべきだというエゴの押し付けにすぎません。

ただ自分の意のままにコントロールしたいだけなのです。

期待になんて応えなくてもいいのですよ。

自分の好きなようにすればいいのです。

その結果、うまくいこうが失敗しようが、すべては自己責任。

そんなことは当たり前の話です。

自分の人生なのですから。

だれも責任なんて取ってくれません。

人生はあっという間に終わります。

限りある貴重な時間なのに、誰かの期待に応えて、やりたくもないことを無理してやり続けるなんて、考えただけで眩暈がします。

Born to be free.

解雇397 コロナ禍でHIV免疫機能障害者の社員に在宅勤務を認めずに特例勤務の提案を行った上で、退職勧奨した会社の対応の違法性が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、コロナ禍でHIV免疫機能障害者の社員に在宅勤務を認めずに特例勤務の提案を行った上で、退職勧奨した会社の対応の違法性が否定された事案を見ていきましょう。

ブルーベル・ジャパン事件(東京地裁令和4年9月15日・労経速2514号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある労働契約を締結し、東京都内の事業場に勤務していたXが、令和2年2月以降、Y社に対し、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症による免疫機能障害2級の身体障害者手帳を交付されているため、新型コロナウイルス感染症の罹患や重症化への不安があるという理由で在宅勤務等の措置を求めたところ、当該措置が認められなかったばかりか、新型コロナウイルス感染症の罹患を避けるために欠勤したことを捉えて違法な退職勧奨等を受けたほか、意に反して同年4月末日をもって合意退職したものとして取り扱われ、更には、同年4月分の賃金について合理的な理由もなく欠勤等控除をされたと主張し、Y社に対し、(1)労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、(2)労働契約に基づく賃金請求+遅延損害金の支払、(3)労働契約に基づく賞与請求+遅延損害金、(4)Xに対して在宅勤務等の措置を認めなかったことを含むY社の前記一連の対応は、Xに対する合理的配慮義務及び安全配慮義務を怠ったものとして不法行為を構成し、これにより精神的苦痛を被ったと主張し、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求として、慰謝料300万円及び弁護士費用30万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

本判決確定日の翌日以降の金員の支払を求める部分却下

その余の請求棄却

【判例のポイント】

1 令和2年3月9日時点のXの在宅勤務の申入れに対するY社の対応について不法行為が成立するかを検討すると、当時、新型コロナウイルス感染症については、平常時の通勤時間帯の公共交通機関のように特段の感染対策が施されないままに不特定多数人が密集するといった状況下においては感染の可能性があるが、頻回の換気や密集の回避あるいは衛生マスクの着用等といった感染防止対策が講じられている環境下であれば、感染可能性を一切否定はできないが、その危険性は低下するといった認識が一般化しつつあったといえ、少なくとも、かかる環境下であっても、通勤時の公共交通機関の利用あるいは職場における労務提供の際に感染の危険性が高まるといった認識が医学的知見の裏付けをもって一般化していたとまでは認められない
また、Xは、同年2月10日に本件疾病及び本件障害に係る定期診断を受けたが、検査結果から免疫状態は安定し、ウイルス学的にも良好な状態が保たれていたこと、Xは、主治医から、できるだけ人込みや不必要な外出を避けるよう指導されていたものの、日常生活上の行動制限や通勤及び就業の中止まで指示されてはいなかったこと、本件疾病を有する患者が健常者に比較して新型コロナウイルスに感染しやすいなどといった相互関連性が医学的エビデンスに根拠づけられて提示されていたものではないことが認められる。

原告側の主張も十分理解できるところですが、証拠からの認定としては上記のとおり、会社側の対応は問題なしとされました。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2013 人生ドラクエ化マニュアルⅡ#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

著者は、元エニックス社員の方です。

人生はまさに冒険であり、RPGそのものです。

仲間を見つけ、武器をアップデートしながら、人生の敵と戦って経験値を高めていくのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生の目的は誰かから与えられて設定するものじゃない!自分の血が燃えたぎるような目的を自ら設定するんだ!親や学校や社会などが設定させようとたくらむ目的(会社に勤め、平和な家庭を築け)なんて、全くワクワクしないものを、いつまでも設定しているからダメなんだ。そんなものを設定したところで心が湧き立つようなことはない!」(47頁)

最近、みなさん、ワクワクしてます?

特に仕事で。

そんな人、ほとんどいない気がしますがいかがでしょう笑

ハラハラ、ドキドキ、ムカムカ、シクシクばっかりではないですか?

自分の仕事にワクワクできる人は、もうそれだけで幸せです。

まさにレアキャラです。

今の職業も勤務先もキャリアも、すべて選んだのは他でもない自分です。

今の自分は、これまでの自分の選択の集積です。

労働時間94 勤務時間短縮を理由とする未払賃金等支払請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、勤務時間短縮を理由とする未払賃金等支払請求に関する裁判例を見ていきましょう。

クオール事件(東京地裁令和4年12月2日・労判ジャーナル134号34頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間でパートタイマーとして労働契約を締結し、Y社の運営するコンビニエンスストアにおいて労務を提供していたXが、Y社によって夜勤シフトの始業時間が一方的に変更され、勤務時間が短縮されたことは無効であり、また、時間外労働及び深夜労働に係る割増賃金にも未払があるとして、Y社に対し、労働契約に基づき、短縮された勤務時間に係る未払賃金及び同期間の未払の割増賃金等の支払に加え、労働基準法114条に基づく付加金等の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払割増賃金等請求一部認容

【判例のポイント】

1 Xは、本件雇用契約において夜勤の始業時刻を午後10時とする旨の合意をしたにもかかわらず、XがD店へ異動した後に、Y社が一方的に夜勤の始業時刻を午後11時に変更し、勤務時間を1時間短縮したことは無効であると主張するが、XがY社に入社する際に交わされた成立に争いのないパートタイマー雇用契約書には、終業時間について、「月~日 23:00~翌8:00」、「上記時間帯で週5日間、週39.5時間のシフト制」と記載されていることから、XとY社との間で始業時刻に関する別段の合意をするなどの特段の事情が認められない限り、本件雇用契約書記載のとおり始業時刻については午後11時とする合意があったものと認めるのが相当であるところ、XとY社との間で、本件雇用契約書の記載内容とは異なる始業時刻に関する別段の合意をしたなどの特段の事情は認められないから、本件雇用契約書により、Xの入社の時点から夜勤の始業時刻を午後11時からとする雇用契約が成立したと認めるのが相当であり、本件賃金請求は理由がない。

これだけを読むと結論に異論がないように見えますが、「別段の合意」の有無が争点となることは少なくありません。

最終的に合意の存在が認定できない場合には、原則通り、契約書記載の内容が雇用契約の内容となります。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2012 ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「社員のモチベーションが10割!」と書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

思いどおりにいかないことがあっても、他人のせいにしない。自分の問題として受け入れて、努力する。社員を成長させるために、社長は、『不条理な出来事もトラブルも、すべて自分を磨く砥石である』ということを早期から社員に指導していくべきだと思います。」(228頁)

何事も最初が肝心です。

何を「当たり前」とするかで、その人の人生が決まるといっても過言ではありません。

人生のアーリーステージで、メンターからどのような教えを受けたかによって、その人の価値感の大半は形成されるのだと思います。

一度形成された価値観は、そう簡単に修正されることはありません。

良くも悪くも。

解雇396 運転免許停止処分中の自動車運転行為を理由とした懲戒解雇が社会通念上の相当性を欠くとして無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、運転免許停止処分中の自動車運転行為を理由とした懲戒解雇が社会通念上の相当性を欠くとして無効とされた事案を見ていきましょう。

トヨタモビリティ事件(東京地裁令和4年9月2日・労経速2513号19頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、Y社に対し、Y社のXに対する懲戒解雇が無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、令和2年3月分の未払賃金26万6725円+遅延損害金等の支払を求め、上記地位確認請求が認容されない場合の予備的請求として、退職金513万6550円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 本件賞罰規程9条1項及び2項において具体的に列挙された事由は刑法典に規定された犯罪を構成するものに限られていないこと、かつ、犯罪の重大性にかかわらず、あえて特別法に規定された犯罪を懲戒事由から除外する合理性も見いだし難いことからすれば、同条1項⑧及び同条2項⑤の「刑法」は、「刑法その他の刑罰法規」と解釈すべきである。

2 本件運転行為は、事故の発生を伴っていないところ、本件賞罰規程上、事故の発生を伴わない飲酒運転が懲戒解雇事由とされていないこと及び無免許運転(免停処分を受けている期間中の運転)が危険性や悪質性の点において飲酒運転のそれを超えるとは直ちにいい難いことに照らせば、これについて懲戒解雇を行うことの相当性は慎重に検討せざるを得ない
・・・以上に加え、本件運転行為が、本件店舗と近隣の商業施設との間の約1.3㎞を1回走行したにとどまること、本件運転行為によりY社に明らかな損害が発生したとは認められないこと、Xが、Y社に入社してから本件懲戒解雇(及びこれに先立つ諭旨退職)を受けるまでの約27年間にわたり、Y社から懲戒処分を受けたことがないこと等の酌むべき事情をも勘案したとき、本件運転行為について懲戒解雇を行うことは、懲戒処分の量定の均衡を欠くといわざるを得ない

相当性の要件を欠くという理由で無効と判断されています。

現場での判断がとても難しいですね。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。