おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。
今日は、飲酒を伴う歓迎会等での入社内定者の発言を理由とする内定取消が有効とされた事案を見ていきましょう。
兼松アドバンスト・マテリアルズ事件(東京地裁令和4年9月21日・労経速2514号26頁)
【事案の概要】
本件は、Y社から、採用内定を得て、その後、Y社から内定を取り消されたXが、Y社に対し、次の各請求をする事案である。
(1)主位的請求
Xが、本件内定取消しは客観的に合理的な理由を欠き社会通念上の相当性を満たさない無効なものである旨主張して、Y社に対してする次の各請求
ア 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
イ 労働契約に基づく次の各金員の支払請求
(ア)未払賃金
(イ)賞与
(2)予備的請求
Xが、本件内定取消しは客観的に合理的な理由を欠き社会通念上の相当性を満たさない違法なものであり、これによって採用に係るXの期待権が侵害されたと主張して、Y社に対してする、不法行為に基づく損害賠償314万6880円+遅延損害金
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 ①EやFを呼び捨てにしたこと(二次会)、②Y社への入社理由について、ついでに受けただけである、たまたま採用までのスピードが早かったため、入社することにした旨の発言をしたこと(二次会。同旨の発言を本件会食前にもしている。)、③Eに対して、「やくざ」、「反社会的な人間に見えるな」と述べたこと(二次会から三次会への移動中)については、いずれもY社従業員(上司や先輩に当たる。)に対して礼を失する行為であり、特に上記③の「やくざ」、「反社会的な人間」との表現は侮辱的なものであって、同僚に対してする発言として著しく不穏当で不適切であるというべきである。Xがかかる発言をしたことは、それが飲酒の上でなされたものだとしても、従業員同士の強調に反し、職場の秩序を乱す悪質な言動であるということができる。
2 社内ルールやコンプライアンスを遵守する姿勢は、Y社の従業員である以上、当然に必要な資質であるといえることに加え、本件支店は18名で構成される小規模な事業所であり、業務の正常な遂行のために従業員同士の協調性が求められること、特に営業職においては、社内外と円滑なコミュニケーションを図る協調性が重要かつ最低限必要な能力として求められる上、取引先との関係性を円滑にするために月に数回の会食の場に参加することがあることから、会食の場での社会人としての最低限のコミュニケーション能力、礼節が求められること、Y社においては、上記資質等をXが備えているものとの判断の下、本件採用内定をしたことがそれぞれ認められ、これらからすると、Xの前記言動は、これらの基本的な資質をXが欠いていたことを示すものであって、かつ、Y社はかかる資質の欠如を本件採用内定時には知り得なかったといえるから、これらの理由に基づいて本件採用内定を取り消すことは、XがB支店長及びEに対して架電して謝罪したことを踏まえても、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるというべきである。
どうしちゃったのでしょう。社交辞令が言えない方なのかもしれませんね。
いずれにせよ裁判所の判断が上記のとおりで安心しました。
日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。