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解雇397 コロナ禍でHIV免疫機能障害者の社員に在宅勤務を認めずに特例勤務の提案を行った上で、退職勧奨した会社の対応の違法性が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、コロナ禍でHIV免疫機能障害者の社員に在宅勤務を認めずに特例勤務の提案を行った上で、退職勧奨した会社の対応の違法性が否定された事案を見ていきましょう。

ブルーベル・ジャパン事件(東京地裁令和4年9月15日・労経速2514号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある労働契約を締結し、東京都内の事業場に勤務していたXが、令和2年2月以降、Y社に対し、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症による免疫機能障害2級の身体障害者手帳を交付されているため、新型コロナウイルス感染症の罹患や重症化への不安があるという理由で在宅勤務等の措置を求めたところ、当該措置が認められなかったばかりか、新型コロナウイルス感染症の罹患を避けるために欠勤したことを捉えて違法な退職勧奨等を受けたほか、意に反して同年4月末日をもって合意退職したものとして取り扱われ、更には、同年4月分の賃金について合理的な理由もなく欠勤等控除をされたと主張し、Y社に対し、(1)労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、(2)労働契約に基づく賃金請求+遅延損害金の支払、(3)労働契約に基づく賞与請求+遅延損害金、(4)Xに対して在宅勤務等の措置を認めなかったことを含むY社の前記一連の対応は、Xに対する合理的配慮義務及び安全配慮義務を怠ったものとして不法行為を構成し、これにより精神的苦痛を被ったと主張し、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求として、慰謝料300万円及び弁護士費用30万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

本判決確定日の翌日以降の金員の支払を求める部分却下

その余の請求棄却

【判例のポイント】

1 令和2年3月9日時点のXの在宅勤務の申入れに対するY社の対応について不法行為が成立するかを検討すると、当時、新型コロナウイルス感染症については、平常時の通勤時間帯の公共交通機関のように特段の感染対策が施されないままに不特定多数人が密集するといった状況下においては感染の可能性があるが、頻回の換気や密集の回避あるいは衛生マスクの着用等といった感染防止対策が講じられている環境下であれば、感染可能性を一切否定はできないが、その危険性は低下するといった認識が一般化しつつあったといえ、少なくとも、かかる環境下であっても、通勤時の公共交通機関の利用あるいは職場における労務提供の際に感染の危険性が高まるといった認識が医学的知見の裏付けをもって一般化していたとまでは認められない
また、Xは、同年2月10日に本件疾病及び本件障害に係る定期診断を受けたが、検査結果から免疫状態は安定し、ウイルス学的にも良好な状態が保たれていたこと、Xは、主治医から、できるだけ人込みや不必要な外出を避けるよう指導されていたものの、日常生活上の行動制限や通勤及び就業の中止まで指示されてはいなかったこと、本件疾病を有する患者が健常者に比較して新型コロナウイルスに感染しやすいなどといった相互関連性が医学的エビデンスに根拠づけられて提示されていたものではないことが認められる。

原告側の主張も十分理解できるところですが、証拠からの認定としては上記のとおり、会社側の対応は問題なしとされました。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。