おはようございます。
今日は、運転免許停止処分中の自動車運転行為を理由とした懲戒解雇が社会通念上の相当性を欠くとして無効とされた事案を見ていきましょう。
トヨタモビリティ事件(東京地裁令和4年9月2日・労経速2513号19頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、Y社に対し、Y社のXに対する懲戒解雇が無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、令和2年3月分の未払賃金26万6725円+遅延損害金等の支払を求め、上記地位確認請求が認容されない場合の予備的請求として、退職金513万6550円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
解雇無効
【判例のポイント】
1 本件賞罰規程9条1項及び2項において具体的に列挙された事由は刑法典に規定された犯罪を構成するものに限られていないこと、かつ、犯罪の重大性にかかわらず、あえて特別法に規定された犯罪を懲戒事由から除外する合理性も見いだし難いことからすれば、同条1項⑧及び同条2項⑤の「刑法」は、「刑法その他の刑罰法規」と解釈すべきである。
2 本件運転行為は、事故の発生を伴っていないところ、本件賞罰規程上、事故の発生を伴わない飲酒運転が懲戒解雇事由とされていないこと及び無免許運転(免停処分を受けている期間中の運転)が危険性や悪質性の点において飲酒運転のそれを超えるとは直ちにいい難いことに照らせば、これについて懲戒解雇を行うことの相当性は慎重に検討せざるを得ない。
・・・以上に加え、本件運転行為が、本件店舗と近隣の商業施設との間の約1.3㎞を1回走行したにとどまること、本件運転行為によりY社に明らかな損害が発生したとは認められないこと、Xが、Y社に入社してから本件懲戒解雇(及びこれに先立つ諭旨退職)を受けるまでの約27年間にわたり、Y社から懲戒処分を受けたことがないこと等の酌むべき事情をも勘案したとき、本件運転行為について懲戒解雇を行うことは、懲戒処分の量定の均衡を欠くといわざるを得ない。
相当性の要件を欠くという理由で無効と判断されています。
現場での判断がとても難しいですね。
解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。