Daily Archives: 2023年6月29日

労働者性52 労災保険法上の労働者該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労災保険法上の労働者該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

国・横浜西労基署長事件(大阪地裁令和4年12月21日・労判ジャーナル133号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が請け負った太陽光発電パネル設置工事作業等に従事していたXが、Y社の労働者として上記作業等に従事したことによりうつ病を発病したと主張して、横浜西労基署長に対し、労災保険法に基づく療養補償給付の請求をしたところ、同署長が、XがY社の労働者には当たらず、かつ、上記精神障害の発病はY社の業務上の事由によるものにも当たらないとして、これを不支給とする旨の処分をしたため、Xが、国を相手として、本件処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社からの仕事の依頼、業務指示等に対する諾否の自由を有しており、本件工事での作業等の方法について一定の裁量が認められ、Y社から業務遂行上の具体的な指揮監督を受けてもいなかったものであり、勤務場所及び勤務時間については指定されていたものの、これらの事情が使用従属性を強く裏付けるものとは評価できず、労務提供の代替性もあったものであって、これらを総合すれば、労務提供の形態の面で、XがY社の指揮監督下に置かれていたものとは評価し難く、また、報酬についても、基本部分や「早出」及び「残業」名目での支払は、労務対償性があることを示すものといえる一方で、管理費名目で利益分配も受けており、必ずしも使用従属性を強く補強する程度に労務対償性があるとまではいえず、さらに、その他の事情についてみても、Xは、本件工事での作業に使用する道具を一部自ら調達し、作業検収書の作成及び提出やY社への請求書の送信に際して自らが設立したA興業の名義を使用し、請求に当たって消費税を加算し、その支払いを受けるなど、本件工事の作業等を受注したのが、自らが設立したA興業であってその契約関係は雇用ではなく請負であるとの認識を有しているものと推認されることなどから、XがY社の指揮監督の下でY社に使用されてY社に対して従属的に労務を提供し、その対価としてY社から賃金を支払われていたと評価することは困難というべきであって、Xが労災保険法上の「労働者」には当たるということはできない。

労働者性が争点となる事案では、100:0のようなわかりやすいケースはほとんどありません。

総合考慮によるため、雇用と請負のどちらの色が濃いかを見ていくことになります。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。