おはようございます。
今日は、競業避止義務違反等を理由とする懲戒処分の有効性について見ていきましょう。
不動技研工業事件(長崎地裁令和4年1月16日・労経速2509号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y社から競業避止義務違反又は競業行為への加担等を理由として懲戒処分等を受けたA・B・Cが、各懲戒処分等の違法、無効等を主張して、Y社に対し、Aが、懲戒解雇無効地位確認及び未払賃金等の支払を求め、Cが、諭旨解雇無効地位確認等請求及び未払賃金等支払を求め、Bが、降格処分無効管理職群1級の地位確認等請求及び降格処分に伴う差額分等の支払を求め、また、Aらが、Y社が懲戒処分をしたことによる不法行為に基づく損害賠償等の請求及びY社が懲戒処分を従業員等に公表等したことによる不法行為(名誉毀損)に基づく損害賠償等の支払を求め、さらに、A及びCが、未払割増賃金等の支払及び付加金等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
地位確認等請求認容
未払割増賃金等支払一部認容
慰謝料等請求一部認容
【判例のポイント】
1 Y社の元従業員Dは、Y社の現職従業員らを引き抜き、Y社と競業する業務を行う新会社を設立し、新会社へ転職させることを計画していたと認められ、Aは、同計画が具体化する当初から、Dから相談を受け、随時、協議を重ねてきたということができるから、同計画について、Dと通謀したと認められ、そして、等級面談の再に所属課員に対し、新会社への転職意向を確認したことは、同計画への参加への働きかけに当たると認められること等から、Aの行為は、就業規則119条24号所定の懲戒事由に該当することが認められるところ、就業規則116条は、服務規律違反について、1項で、適切な指導及び注意を行い、改善を求める旨規定し、2項で、1項にもかかわらず、改善が行われず、企業秩序維持のため必要があるときに、懲戒処分を行う旨規定するが、上記Aの行為について、本件懲戒解雇前に、Y社が指導又は注意をした形跡は認められないから、Aについて、本件懲戒解雇をしたことは、懲戒権を濫用したものとして、労働契約法15条により無効であると認められる。
2 Cは、Dの計画に関与したと認められるが、その関与の程度に照らして、Dと通謀したとは認められず、また、Cは、Dに新会社に引き連れていくことができそうな部下の名前を挙げたが、部下に対して実際に働きかけたことを認めるに足りる証拠はなく、就労時間中にDと連絡し、引き連れていくことができそうな部下等の名前を挙げて、上記計画を助長したことは、就業規則所定の職務専念義務に違反するものであるが、同行為の性質、態様に鑑み、重大な違反行為に該当するとはいえず、就業規則所定の懲戒事由に該当するとは認められず、本件諭旨解雇は無効である。
上記判例のポイント1のように、適切なプロセスを経ることは、懲戒処分(特に懲戒解雇)を行う上ではとても重要です。
懲戒解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。