おはようございます。
今日は、タイムカードについて文書提出命令が認められた事案を見ていきましょう。
JYU-KEN事件(東京地裁立川支部令和4年9月16日・労判ジャーナル132号58頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xの時間外勤務手当等請求事件及びY社の損害賠償等請求反訴事件について、Xが、Y社に対し、Xの出退勤時刻が記載された該当期間のタイムカードの提出を求めるため、民事訴訟法220条4号(同号の除外事由がない文書)により、文書提出義務を負っているとして、文書提出命令申立てがされた事案である。
【裁判所の判断】
認容
【判例のポイント】
1 Y社の従業員に関する出退勤時刻は、サイボウズというソフトウェアを使用したタイムカードにより行われており、平成31年2月1日から令和2年6月15日までのタイムカードの出退勤時刻の記録については、従業員であったXが自らサイボウズから印刷したものを提出していること、令和2年6月頃に労働基準監督署が介入したことを契機として、サイボウズ内のタイムカードがロックされたうえ、業務用PCの持ち出しが禁止されてしまい、Xは、令和2年6月16日以降令和2年7月31日(Xの退職日)までのタイムカードが入手できず、本件訴訟に証拠として提出できていないことが認められ、Xが提出を求めている本件文書については、当然、Y社が管理し、所持しているものと認めるべきであること等から、Y社は、本件文書を所持していると認めるべきで、民事訴訟法220条4号により、Xの本件申立ては理由があるから、これを認容する。
残業代請求訴訟においてときどき登場する文書提出命令です。
文書所持者が文書提出命令に従わない場合や、裁判での使用を妨害する目的で当該文書を滅失した場合は、「当該文書の記載に関する相手方の主張」や「その事実に関する相手方の主張」を、裁判所は真実と認めることができるので注意しましょう。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。