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今日は、各種手当の時間外割増賃金該当性に関する裁判例を見ていきましょう。
住吉運輸事件(大阪地裁令和4年10月13日・労判ジャーナル132号52頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で労働契約を締結し、貨物自動車の運転手として稼働していたXが、平成30年7月から令和元年5月までの間、時間外労働を行ったとして、Y社に対し、労働契約に基づき、時間外労働に対する未払割増賃金等の支払を求めるとともに、労基法114条に基づき、付加金等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
一部認容
【判例のポイント】
1 業務手当について、Y社は、Xに対し、「業績手当」の名目で賃金を支払ってきたところ、本件労働契約の締結時、Y社がXに対して業績手当を時間外労働に対する対価として支払う旨を説明したとは認められず、契約書及び就業規則にもその旨の規定はなく、むしろ、就業規則上、「業績手当」は「手当」の一つとされているところ、これは割増賃金の支払とは区別されており、また、「業績手当」という名称から、時間外労働に対する対価として当該賃金が支払われたものと理解することも困難であるから、業績手当が時間外労働等に対する対価として支払われたものと認めることはできず、基礎賃金に含まれるものと解するのが相当である。
2 運行手当について、Y社は、Xに対し、「運行手当」の名目で賃金を支払ってきたところ、本件労働契約の締結時、Y社がXに対して運行手当を時間外労働に対する対価として支払う旨を説明したとは認められず、契約書及び就業規則にもその旨の規定はなく、また、「運行手当」という名称から、時間外労働に対する対価として当該賃金が支払われたものと理解することも困難であることは、業績手当と同様であるから、運行手当が時間外労働等に対する対価として支払われたものと認めることはできず、基礎賃金に含まれるものと解するのが相当である。
3 無事故手当について、無事故手当は、就業規則上に定めがあり、Xに対しても平成30年7月から平成31年3月まで毎月同額が支払われていることに照らすと、一定の条件を満たせば一定の額が支払われる性質を有していたと認められ、労働基準法37条5項及び同法施行規則21条所定の除外賃金に含まれず、また、同手当は、支給要件が就業規則上明らかでないものの、その名称に照らし、勤務中に交通事故を生じさせなかったことによって支払われるものと推認されるから、同手当は、通常の労働時間における労働の成果に対する対価としての性質を有し、割増賃金として支払われたものとみることもできず、無事故手当が時間外労働等に対する対価として支払われたものと認めることはできず、基礎賃金に含まれるものと解するのが相当である。
いくつもの手当にまたがって固定残業代の意味を持たせるのはやめたほうがいいです。
固定残業代は固定残業代として誰がどう見てもそうとしか解釈できないように支払うのをおすすめいたします。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。