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今日は、競業避止義務違反に基づく会社からの損害賠償請求の可否について見ていきましょう。
REI元従業員事件(東京地裁令和4年5月13日・労判1278号20頁)
【事案の概要】
本件のうち、甲事件は、Y社が、Xに対し、Xが令和2年10月9日付け秘密保持契約書に定める競業避止義務に違反し、あるいは自由競争の範囲を逸脱した違法な競業を行ったと主張して、債務不履行又は不法行為に基づき、約定損害額139万8331円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
また、本件のうち、乙事件は、Xが、Y社に対し、Xが在職中であった令和2年9月1日から同月30日までの賃金等36万5150円が支払われていないと主張して、雇用契約に基づき、同額の支払を求めるとともに、債務不履行に基づき、同額に対する退職後に到来する賃金支払日の翌日である同年10月16日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律6条1項の定める年14.6%の割合による遅延利息の支払いを求めた事案である。
【裁判所の判断】
1 甲事件に係るY社の請求を棄却する。
2 Y社は、Xに対し、36万5150円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 Y社は、主にシステムエンジニアを企業に派遣・紹介する株式会社であって、その具体的な作業については各派遣先・常駐先・紹介先会社の指示に従うものとされていたと認めることができる。このようなY社におけるシステムエンジニアの従事する業務内容に照らせば、Y社がシステム開発、システム運営その他に関する独自のノウハウを有するものとはいえないし、Xがそのようなノウハウの提供を受けたと認めるに足りる証拠もないのであって、Y社において本件合意書が退職後の競業避止義務を定める目的・利益は明らかとはいえない。
2 ・・・いずれも文言上、転職先の業種・職種の限定はないし、地域・範囲の定めもなく、「取引に関係ある」、「競合関係にある」又は「お客先に関係ある」事業者とされ、Y社の取引先のみならず、Y社の客先の取引先と関係がある事業者までも含まれており、禁止する転職先等の範囲も極めて広範にわたるものといわざるを得ない。・・このようなXの職務経歴に照らすと、上記の範囲をもって転職等を禁止することは、Xの再就職を著しく妨げるものというべきである。
3 以上のように、Y社の本件合意書により達しようとする目的は明らかではないことに比して、Xが禁じられる転職等の範囲は広範であり、その代償措置も講じられていないことからすると、競業禁止義務の期間が1年間にとどまることを考慮しても、本件合意書に基づく合意は、その制限が必要かつ合理的な範囲を超える場合に当たるものとして公序良俗に反し、無効であるといわざるを得ない。
だいたいこういう結論になります。
競業避止義務の考え方については顧問弁護士に相談をし、現実的な対策を講じる必要があります。