おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。
今日は、合理的期待を初回の更新では認め無効としたが、以降の更新では認めなかった事案を見ていきましょう。
グッド・パートナーズ事件(東京地裁令和4年6月22日・労経速2504号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で有期労働契約を締結していたXが、Y社から平成31年3月31日をもって有期労働契約につき雇止めをされたところ、本件雇止めは無効である旨主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、上記労働契約に基づき、同年4月分から令和3年12月分までの未払賃金合計1108万8000円+遅延損害金の支払並びに令和4年1月分以降の未払賃金として月額33万6000円の支払を求め、さらに、本件雇止めが不法行為に当たると主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料50万円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
Y社は、Xに対し、40万5570円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 本件メールは、本件契約の更新が確定したことを内容とするものであるから、これを受信したXにおいて、初回の契約満了時である同年3月31日の時点において、本件契約が更新されることについて強い期待を抱かせるものであったということができる。そうすると、Xには、同日時点において、本件契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる。
2 本件メールの内容は、2か月間と期間を明示して、本件契約の更新が確定したことを内容とするものであり、令和元年6月以降の更新について期待を生じさせるような内容ではなかったというべきである。
そして、本件メール以外に、Y社において同月以降の更新につき期待させるような言動があったと認めるに足る証拠はなく、本件契約を締結した当初において、長期にわたる更新が予定されていたことを窺わせる事情も認められない。加えて、本件雇止めが本件契約の初回の更新時にされたものであり、雇用継続に対する期待を生ぜしめるような反復更新もされていなかったことからすると、本件メールに記載のない二度目以降の契約更新について、Xが更新を期待することに合理的な理由があったと認めることはできない。
3 Y社は、Xが平成31年4月の時点で再就職していたこと等をもって、Y社での就労意思を喪失していた旨主張する。
しかしながら、一般的に雇止めされた労働者が、当該雇止めの効力について争う場合において、生計維持のために新たな職を得ること自体はやむを得ない面があり、他社への就職をもって直ちに元の就労先における就労意思を喪失したと認めるのは相当でない。
上記判例のポイント3はしっかり押さえておきましょう。
再就職による就労意思の喪失の論点はよく出てきますので、裁判所の考え方の傾向を知っておくことはとても大切です。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。