不当労働行為300 取締役である組合員の労組法上の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、取締役である組合員の労組法上の労働者性について見ていきましょう。

マテロックス事件(大阪府労委令和3年5月7日・労判1275号142頁)

【事案の概要】

本件は、取締役であるD組合員が労組法3条の労働者に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

労組法3条の労働者に該当する。

【命令のポイント】

1 D組合員の業務内容は、従業員として入社してから取締役に選任された後まで、一貫して、他の従業員と同様、工場で製品加工という現場作業に従事していたこと、少なくとも担当業務の範囲内等において、取締役としての意思決定や指揮監督する行為があったとはいえず、そのほかにD組合員が会社でどのように指揮監督していたかについても具体的な疎明はないこと、担当する業務の遂行を細かく指示されていること、からすると、D組合員はその業務遂行に当たり、会社の岸監督の下に労務の提供を行っていたとみることもできる。
D組合員は、会社から、タイムカードの打刻と打刻理由説明書の作成や有給休暇消火記録の提出を求められていたことからすると、服務態様からみる限り、会社による一定の時間的拘束を受けていたといえる。
D組合員の報酬には、労務提供への対価の要素も含まれていたとみることができること、会社通知書から、D組合員は、会社から、労務を提供しなければ減給されることも想定されていたことを勘案すると、D組合員の報酬の一部には労務対価性があったとみることができる。
D組合員は、取締役会や役員会議に出席したこと、労使会議に会社側として参加したこと、会社設備等の導入に関与したこと等は認められるものの、役員として会社経営に参画していたとまでみることはできない。加えて、会社通知書が交付された時期には、D組合員の会社における影響力は著しく弱まり、会社の経営に関与していたとみることはできない。
以上のことを総合的に判断すると、解任に至る当時、D組合員は、取締役であっても、実質的には使用人としての地位にあったとみるのが相当であり、労組法3条の労働者に該当するというべきである。

2 D組合員が組合員であることを否定し、団交申入れに応じなかった会社の対応は、組合の運営に対する支配介入であり、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。

労働者性については、労基法においても労組法においても、実態を見られるという点では共通しています。

本件では、取締役ではありましたが、実質的には労働者であると判断されました。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。