おはようございます。
今日は、語学教室校長の管理監督者性に関する裁判例を見ていきましょう。
ビーチャイニーズ事件(東京地裁令和4年3月30日・労判ジャーナル128号24頁)
【事案の概要】
本件は、令和元年9月17日までY社に雇用され就労していたXが、Y社に対し、①労働契約に基づく賃金請求として平成30年8月から令和元年8月までの就労に係る割増賃金の一部である203万9775円+遅延損害金の支払、②労基法114条に基づく付加金請求として、203万9775円+遅延損害金の支払、③XはY社代表者及び被告役員から日常的にパワーハラスメントを受けたなどと主張して、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求として、慰謝料500万円及び弁護士費用50万円の合計550万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
1 Y社は、Xに対し、21万6748円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xに対し、付加金21万6748円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 Xは、Y社の語学教室のa校の校長を務めていたところ、X自身もY社の非常勤講師と同様に相当数の講座を担当しており、Xの業務内容の大半は、中国語の講師としての業務であったものと認められる。
Y社は、Xがa校の講師のシフトを決定していた旨主張するところ、他方で、Xは、講師のシフトはBが決定しており、Xにはシフトを決定する権限はなかった旨主張しており、Xが当該権限を有していたと認めるに足りる的確な証拠はないことからすれば、Y社の主張は採用することはできない。
また、Y社は、Xはa校の講師の採用等に関する権限を有していたと主張するが、他方で、Xは、そのような権限は一切与えられていなかった旨主張しているところ、証拠によれば、Xが非常勤講師の採用面接を担当したことがあることは認められるものの、証拠上当該講師の採用過程は明らかではなく、Xに採用等に関する決定権限があるかは証拠上明らかではない。
以上によれば、Xが、非常勤講師等のシフト、採用、人事考課等に関して権限を有していたとは認め難く、いずれにせよ、Xが経営者に代わって他の労働者の労働時間等を決定し他の労働者の労務を管理監督する権限と責任を有していたとは認められない。
また、Xは、Y社のシフト表に基づいて勤務し、休日に出勤する場合には、事前にBの許可を得た上で出勤していることに加え、Xの上記業務内容も考慮すれば、その勤務態様について自由な裁量を有していたとまでは認められない。
さらに、Y社がXに対し、管理監督者の職責に応じた手当等を支給したことを認めるに足りる証拠はなく、Xの給与額等を踏まえても、Xが厳格な労働時間等の規制をしなくてもその保護に欠けることはないといえる程度の待遇を受けていたと評価することはできない。
したがって、Xは、労基法41条2号の管理監督者に該当するとは認められない。
開かずの扉ですからね。
もうそろそろ管理職を管理監督者として取り扱うのはやめましょう。
賃金の消滅時効期間を考えるとえらいことになりますので。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。