Monthly Archives: 12月 2022

本の紹介1345 運に愛される人#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

運がいい人っていますよね。

どんな違いがあるのでしょうね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は、人が成功するかしないかは、ただ習慣の差だと思っています。才能の差ですらありません。なぜなら、才能の差というのは、突き詰めれば『自分の才能を磨く習慣がついているかいないかの差』だからです。」(147頁)

まあそういうことです。

今ある結果の差は、これまで何にどれだけの時間を使ってきたかの差にすぎません。

才能の差ではなく習慣の差です。

ほんの小さな習慣の差も、5年、10年と続ければ、もはや逆転不可能なほどに大きな差となります。

何を習慣にし、何を継続するか。

自分の人生は自分の手で切り拓く。

管理監督者54 未払残業代請求訴訟において管理監督者性や変形労働時間制が争点となった事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、未払残業代請求訴訟において管理監督者性や変形労働時間制が争点となった事案

辻中事件(大阪地裁令和4年4月28日・労判ジャーナル126号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、総務部長として勤務していたXが、平成30年4月から令和2年3月までの間、時間外労働を行ったとして、Y社に対し、時間外労働に対する賃金432万0706円+遅延損害金の支払を求めるとともに、労基法114条に基づき、付加金+遅延損害金を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、298万3613円+遅延損害金を支払え。

 Y社は、Xに対し、149万1806円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、Xが労基法41条2号所定の管理監督者に当たる旨を主張する。
そこで検討すると、XはY社の総務部長の職にあったことが認められるが、その職務の内容は、経理事務や行政機関に提出する文書の作成など、事務的性格の強いものであり、Xが、Y社の事業経営に関する意思決定に影響を及ぼし、部下の採用及び解雇等の人事権を有していたことを認めるに足りる証拠はない。また、支払われた給与の額(年間約500万円又は約600万円)に照らしても、Xが、管理監督者としてふさわしい待遇を受けていたとはいえない
すると、Xが労基法41条2号に定める管理監督者に当たるとは認められない。

2 Y社の就業規則には、休憩時間は、基本的に12時から13時までであり、別に午前及び午後にそれぞれ15分の休憩を与える旨の定めがあることが認められる。
もっとも、12時から13時については一斉に休憩時間とされているから、実際に休憩を取得することができたと考えられるが、就業規則上、午前及び午後の15分間は時間が特定されておらず、各自が個別に取得するものとされているところ、同一部署で勤務していたDの証言によっても、Xは、業務中に自席でお茶を飲んだりすることがあったという程度であり、その間、Xが労務から解放されていたとは認められない
すると、Xが12時から13時の1時間とは別に、休憩を取得していたとは認められない。
したがって、休憩時間については、各労働日につき1時間とするのが相当である。

3 変形労働時間制が有効となるためには、使用者と労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との間で協定を締結し、その具体的な内容(変形期間やその内容等)を定める必要があるところ(労基法32条の4第1項)、被告が、本件訴訟において賃金が請求されている平成30年4月から令和2年3月までの間、過半数代表者等との間でどのような内容の協定を締結したかについて、具体的な主張立証はされていない
すると、労働基準監督署への届出(労基法32条の4第4項、32条の2第2項、労働基準法施行規則12条の2の2第2項)をXが怠ったか否かに関わらず、Y社において、前記認定が左右されるような変形労働時間制が効力を有するものと認めることはできない。

複数の論点がありますが、特に上記判例のポイント2はしっかり理解しておかないともったいないですね。

なお、部長クラスで管理監督者性が肯定されることはありません。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介1344 使える!『徒然草』(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

17年前に出版された本ですが、再度、読み返してみました。

今も昔も、教訓は変わらないことがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

だいたい勉強でも習い事でも、なかなか上達しない子どもは、習っているときしかやらないからである。習うことと、練習して身につけることを混同しているのは、子どもだけでなく大人もそうだろう。何にしても技を身につけるためには、一人で練習を繰り返す、孤独な時間を持たなければならないのだ。」(200頁)

子どもの頃の受験勉強や部活等を通じて、このようなことを自然と学んでいくのだと思います。

仕事も勉強も運動も、何度も何度もくり返すことがとても大切です。

くり返すことによって、少しずつ自分のものになっていくのです。

資格試験等で大量の情報を記憶しなければならないときに、定着が甘いと、いざ本番のときに簡単にひっかかってしまうわけです。

「継続は力なり」は、不変の真理です。

賃金238 賃金債権を放棄する内容の和解契約の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、賃金債権を放棄する内容の和解契約の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

吉永自動車工業事件(大阪地裁令和4年4月28日・労経速126号27頁)

【事案の概要】

本件は、平成16年3月にY社と期限の定めのない労働契約を締結していたXが、Y社に対し、日給7000円と合意したにもかかわらず日給6000円しか支払われず、これが最低賃金法4条2項所定の最低賃金額に達しない賃金となった後も日給6000円しか支払わなかったなどと主張して、労働契約に基づく賃金請求権又は不当利得返還請求権に基づき、同月分から退職した令和2年3月分までの差額賃金合計342万4000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、33万9373円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件和解契約は、XがY社に対して有する賃金があればこれについても放棄する内容であるところ、賃金債権を放棄する旨の意思表示の効力を肯定するには、その意思表示が労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在していることを要すると解するのが相当である(最高裁昭和48年1月19日第二小法廷判決)。

2 Bは本件合意書を示し、Xはその内容を確認して署名押印をしたことが認められる。
しかし、平成21年9月30日以降の本件労働契約の賃金額は大阪府の最低賃金額となっているところ、証人Bの証言によれば、Y社において、本件合意書の作成時には、最低賃金額と日給6000円との差額の未払賃金が生じていたことを知っていた者はいなかったことが認められるほか、本件合意書の作成時に、上記差額をXが認識していたことをうかがわせる事情は見当たらない
そうすると、Xは、上記差額の金額はもとより、その存在すら認識せずに本件合意書に署名押印したのであって、このような署名押印に至る経緯に照らせば、労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在しているとはいえない
したがって、本件和解契約の成立は認められない。

労働事件では、このような発想で合意書の有効性を否定することがよくあります。

とりあえず署名をもらっておけばいいという発想ではうまくいきませんので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介1343 「あたりまえ」からはじめなさい#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

世間一般でいう「あたりまえ」からはじめることの大切さもさることながら、

何を「あたりまえ」にするかが人生に大きく影響します。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

給料が上がらない人は給料の低い人の集まりに参加して酒を飲む。そこで会社の愚痴を言う。給料が上がる人は給料の高い人の懐に飛び込んでいく。給料を増やしたいなら給料の高い人と付き合うことだ。」(139頁)

疑う余地のない真実です。

このような文章を読んで「なんかむかつく」とか言っている場合ではないのです。

日々、自分の武器を磨き、チャンスが訪れたときに遺憾なく発揮する。

コンフォートゾーンという名のぬるま湯から飛び出し、場違いさ、居心地の悪さを感じる場所にどんどん飛び込んでいくのです。

やっている人はずっと前からやっていることです。

労働時間84 パソコンのログイン時刻からログアウト時刻までが概ね労働時間と認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、パソコンのログイン時刻からログアウト時刻までが概ね労働時間と認められた事案を見ていきましょう。

学校法人目白学園事件(東京地裁令和4年3月28日・労経速2491号17頁)

【事案の概要】

本件は、時間外労働に係る賃金等を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、296万3031円+遅延損害金を支払え

Y社は、Xに対し、付加金219万3727円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、Y社に出勤するとまず研究室に向かい本件パソコンにログインの操作をしてカレンダーに時刻を記入して業務を開始し、終業時に本件パソコンにログアウトの操作をして上記カレンダーに時刻を記入していた、Xの主な業務内容の詳細は、「業務状況表」のとおりであった旨主張し、X本人もこれに沿う供述をするところ、Xの上記供述内容は自然かつ合理的なものといえ、基本的に信用できるというべきである。
これに対し、Y社は、本件パソコンのログイン・ログアウトの時刻のみでは証拠が不十分である旨主張しているが、本件雇用契約には「所定時間外労働の有無」が「無」との規定があるものの、Y社がXに所定労働時間外の各種業務を担当させていた事実が存すること自体は実質的に争いがなく、にもかかわらず、Y社がXの労働時間の管理を怠っていたのであり、上記X供述の信用性を否定すべき証拠を提出できていない

被告会社が前記のとおり。パソコンのログイン・ログアウトの時刻のみでは証拠が不十分である等と主張することはよくありますが、裁判所的には「じゃあ、会社のほうでログイン・ログアウトの時刻以上に原告の労働時間を正確に管理・把握していた証拠出してね。」という感じです。

立証責任的観点から単に信用性がないと主張するだけでは足りませんので、ご注意を。

日頃から顧問弁護士に相談の上、労働時間の考え方について正しく理解することが肝要です。

本の紹介1342 やりたくないことはやらずに働き続ける武器の作り方#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

著者を見ていると、比較的若いうちにある程度の資産を築けると、その後の人生の自由度が大幅に上がることがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

不安になるのは、他人の発言に揺さぶられてしまうから。他人が作った勝手な統計、勝手な子育て、勝手な老後なんて、ぜんぶ笑い飛ばしてしまえばいい。これからは、自分とは関係のない赤の他人が含まれている『平均』を捨て、自分基準の子育て、自分基準の老後、自分基準の生き方を自ら設計する時代だ。」(35頁)

日本人の国民性からすると、多くの方にとっては「わかっちゃいるけど、なかなかできない。」というのが本音ではないでしょうか。

永遠にマスクを着用しないといけない国で「平均」を捨てることは、多くの人にとってとても勇気がいることです。

世間体、他人の目、他人の評価を過度に気にして、同調圧力の中、多数派意見に従い、目の前に敷かれた「常識」という名のレールの上をただひたすら突き進む人生。

・・・考えただけ眩暈がします(笑)

みなさんが、もっと自由に、好きなように生きられることを心から願っています。

YOLO

管理監督者53 人事上の最終権限を有しない社員の管理監督者性が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、人事上の最終権限を有しない社員の管理監督者性が認められた事案を見ていきましょう。

土地家屋調査士法人ハル登記測量事務所事件(東京地裁令和4年3月23日・労経速2490号19頁)

【事案の概要】

本件は、土地家屋調査士法人であるY社の社員兼従業員であったXが、Y社に対し、①雇用契約に基づき、令和2年2月分以前の未払残業代527万9952円+遅延損害金の支払、②雇用契約に基づき、同年3月分以降の未払残業代86万1219円+遅延損害金、③労働基準法114条に基づき、付加金407万4886円+遅延損害金の支払、④Y社がXに対してした同年7月10日付け普通解雇が無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、並びに、⑤民法536条2項に基づき、本件解雇後の賃金+遅延損害金の支払を、各求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、1万2121円+遅延損害金を支払え。

Y社はXに対し、付加金1万2121円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 職務権限について、Xは、Y社代表者とともに、Y社設立時からの社員であり、社内でY社代表者に次ぐ地位であった。Y社における人事上の最終権限はY社代表者が有していたが、これは、Y社代表者が経営と営業、Xが登記申請等の現場実務の取り仕切りという社員間の役割分担があったことに起因する
現場実務の遂行方法の取り決めや現場での従業員の指導はY社代表者が口を挟むことはなく、Xに一任されていた。名古屋事務所の開設等の重要な経営事項についても、Xに相談の上で決定されていたことがうかがわれる。

2 勤務態様について、Xは、勤務時間中に歯科医院に通院するなどしていたが、仕事を抜けた時間に指導もなかった。また、平成31年1月以降は、自らの裁量で休日出勤や代休の日を決めていた

3 待遇について、Xは平成30年以降は月額60万円の報酬を得ていて、同じ土地家屋調査士の資格者である他の社員2名よりも月額で10万円以上も高く、他の従業員の基本給やXの前職での報酬水準(年収450万円程度)よりも大幅に高い

4 以上によれば、Xは、経営者(Y社代表者)と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、また、そのゆえに、待遇及び勤務態度においても、他の一般労働者に比べて優遇措置が講じられていたということができ、実質的に上記のような法の趣旨が充足されるような立場にあったと認められるから、労基法41条2号の管理監督者に該当するものと認めるのが相当である

開かずの扉で有名な管理監督者性ですが、今回の事案では珍しく扉が開きました。

いずれにせよ、世の管理職の圧倒的多数は管理監督者としては認められませんのでご注意ください。

労務管理は事前の準備が命です。顧問弁護士に事前に相談することが大切です。