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今日は、未払残業代請求訴訟において管理監督者性や変形労働時間制が争点となった事案
辻中事件(大阪地裁令和4年4月28日・労判ジャーナル126号22頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に雇用され、総務部長として勤務していたXが、平成30年4月から令和2年3月までの間、時間外労働を行ったとして、Y社に対し、時間外労働に対する賃金432万0706円+遅延損害金の支払を求めるとともに、労基法114条に基づき、付加金+遅延損害金を求める事案である。
【裁判所の判断】
1 Y社は、Xに対し、298万3613円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xに対し、149万1806円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 Y社は、Xが労基法41条2号所定の管理監督者に当たる旨を主張する。
そこで検討すると、XはY社の総務部長の職にあったことが認められるが、その職務の内容は、経理事務や行政機関に提出する文書の作成など、事務的性格の強いものであり、Xが、Y社の事業経営に関する意思決定に影響を及ぼし、部下の採用及び解雇等の人事権を有していたことを認めるに足りる証拠はない。また、支払われた給与の額(年間約500万円又は約600万円)に照らしても、Xが、管理監督者としてふさわしい待遇を受けていたとはいえない。
すると、Xが労基法41条2号に定める管理監督者に当たるとは認められない。
2 Y社の就業規則には、休憩時間は、基本的に12時から13時までであり、別に午前及び午後にそれぞれ15分の休憩を与える旨の定めがあることが認められる。
もっとも、12時から13時については一斉に休憩時間とされているから、実際に休憩を取得することができたと考えられるが、就業規則上、午前及び午後の15分間は時間が特定されておらず、各自が個別に取得するものとされているところ、同一部署で勤務していたDの証言によっても、Xは、業務中に自席でお茶を飲んだりすることがあったという程度であり、その間、Xが労務から解放されていたとは認められない。
すると、Xが12時から13時の1時間とは別に、休憩を取得していたとは認められない。
したがって、休憩時間については、各労働日につき1時間とするのが相当である。
3 変形労働時間制が有効となるためには、使用者と労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との間で協定を締結し、その具体的な内容(変形期間やその内容等)を定める必要があるところ(労基法32条の4第1項)、被告が、本件訴訟において賃金が請求されている平成30年4月から令和2年3月までの間、過半数代表者等との間でどのような内容の協定を締結したかについて、具体的な主張立証はされていない。
すると、労働基準監督署への届出(労基法32条の4第4項、32条の2第2項、労働基準法施行規則12条の2の2第2項)をXが怠ったか否かに関わらず、Y社において、前記認定が左右されるような変形労働時間制が効力を有するものと認めることはできない。
複数の論点がありますが、特に上記判例のポイント2はしっかり理解しておかないともったいないですね。
なお、部長クラスで管理監督者性が肯定されることはありません。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。