おはようございます。
今日は、不活動待機時間の労基法上の労働時間該当性について見ていきましょう。
システムメンテナンス事件(札幌高裁令和4年2月25日・労判1267号36頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員であるXが、夜間当番中の労働時間のうち、実作業に従事した時間及び移動に要した時間に係る賃金の支払はあるが、待機時間に係る賃金の支払がないなどと主張して、Y社に対し、平成28年7月21日から平成30年9月20日までの期間に係る時間外労働等に対する未払賃金1185万0044円+遅延損害金の支払を求めるとともに、労働基準法114条に基づく付加金963万8110円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審が、未払賃金52万4315円+遅延損害金の支払を求める限度でXの請求を認容したところ、Xは敗訴部分を不服として控訴した。
【裁判所の判断】
Y社は、Xに対し、111万1884円+遅延損害金を支払え
Y社は、Xに対し、付加金22万円+遅延損害金を支払え
【判例のポイント】
1 当番従業員は、午後9時より後の時間帯については、事務所での待機を求められていたものではない。そして、Y社は、メンテナンス部門の従業員に対し、月10回程度の当番を割り当てた上、当番従業員に対し、当番従業員用の携帯電話を携行させ、社用車で帰宅させて、架電があった場合に応答し、必要な場合には現場対応するよう求め、札幌から遠方に出かけたり、飲酒したりすることを禁止していたが、それ以上に登板従業員の行動を制約してはおらず、当番従業員は、帰宅して食事、入浴、就寝等をしたり、買い物に出かけたりなど、私的な生活・活動を営むことが十分に可能であると認められる。
以上に加え、ベル当番の日に1回以上入電のある確率は約33%、入電のあった日における平均入電回数は約1.36回、入電があってから現場に到着し、作業を終了するまでに要する時間の合計は、平均すると、1時間13分程度であって、これらが多いとまではいえないことも併せると、Xが事務所に待機していない時間帯における不活動待機時間については、いわゆる呼出待機の状態であり、Xが労働契約上の役務の提供を義務付けられていたものではなく、労働からの解放が保障され、使用者の指揮命令下から離脱したものと評価することができるから、これが労働時間に当たると認めることはできない。
2 当番従業員は、ベル当番の際、事務所における待機中は、コンビニエンスストアに買い物に出かけたり、インターネットで動画を閲覧するなど自由に過ごすことができてはいたものの、当番従業員が2名とも事務所に待機していることで、顧客からの電話連絡が入ると、速やかに2名で現場に向かうことができるように事務所に待機していたこと、Y社代表者においても、Xを含む当番従業員が、所定の業務終了後も事務所に待機していることを認識し、これを容認していたと認めることができる。そうすると、Xが、事務所に待機していたと認められる時間帯については、労働からの解放が保障されているとはいえず、Y社の指揮命令下に置かれていたものとして、労働時間に当たるものと認めるのが相当である。
上記判例のポイント1と2は比較して押さえておきましょう。
日頃から顧問弁護士に相談の上、労働時間の考え方について正しく理解することが肝要です。