Daily Archives: 2022年10月28日

賃金236 就業規則に明記のない固定残業代の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、就業規則に明記のない固定残業代の有効性について見ていきましょう。

株式会社浜田事件(大阪地裁堺支部令和3年12月27日・労判1267号60頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、時間外割増賃金+遅延損害金、付加金+遅延損害金を請求した事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは、雇用契約に係る契約書等の記載のほか、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきである(最判平成30年7月19日同旨)。

2 Y社において就業規則はあるが賃金規程は存在せず、雇用契約に係る契約書等も存在しない
しかしながら、Y社は、入社面接の際、Xに対し、月給には36時間分のみなし残業手当が含まれることなどを説明したこと、XがY社に入社した後、年に2回、定期的面接が行われ、モニターに映し出された図表には、「※外勤手当について ・外回り営業マン及び施工者に対し、36時間分の残業代相当の外勤手当を支給 ・残業単価は、基本給与(外勤手当、調整手当を除く基準内給与)/160時間(月間基準労働時間)×1.25で算定」と記載されていたこと、Xが見たY社の求人募集に「※月給額には36時間分のみなし残業手当が含まれています。残業時間がそれより少なくても減額することはありません。」と記載されていたことが認められることから、Y社はXに対し、外勤手当は36時間分のみなし残業手当であることを説明し、Xもこれを理解していたと認められる
そして、Y社はXに対し、外勤手当と他の手当を区別して賃金を支給していたのであるから、固定残業代の有効要件を満たしているといえる。

3 Xは、固定残業代を有効とする要件として対価性や清算合意が必要であると主張するが、これらは別途固定残業代を有効とする要件とすべき法的根拠はないから、採用することはできない。

4 以上により、Y社における固定残業代は有効であり、Xに対して支給された外勤手当は月36時間分のみなし残業手当であったと認められる。

にわかには信じがたいですが、地裁の裁判例とはいえ、上記判例のポイント2の事情で固定残業制度が有効と判断されています。

控訴審判決を読んでみたいところです。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。