Daily Archives: 2022年10月26日

有期労働契約115 雇止め法理の適用が否定され、雇止めが有効と判断された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、雇止め法理の適用が否定され、雇止めが有効と判断された事案を見ていきましょう。

学校法人沖縄科学技術大学院大学学園事件(那覇地裁令和4年3月23日・労経速2486号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社との間で有期雇用契約を締結し、1度の更新を経たものの、Y社から平成31年3月31日の雇用期間満了をもって雇止めをされたところ、本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないなどと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇止め後の賃金+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社ではXの業務に限らず、原則として常勤職員を抑制し、任期制職員が採用されていることはY社の財源が国費による補助金に依存していることに伴う人事上の制約に基づくものとして、やむを得ない側面があるものといえる。
また、本件労働契約が看護師としての一定の経験を有する者という特定のスキルの所持者を対象とするものであり、その賃金が年俸450万円(月額37万5000円)とXの経験・スキルに相応する金額といえることからすると、本件労働契約は、その業務が常用性を有していたとしても、Y社が雇用形態として有期雇用を選択したことに合理性を欠くとはいえない。

2 Y社のクリニックは、平成29年7月末日付けで医師不在のために閉院となり、その後、令和元年6月3日には再開したものの、再開後は予約制とされ、開院時間についても、従前の週16時間が週10時間に変更された。XはY社のクリニックの職員として雇用されたため、雇用期間中にクリニックの運営状況が縮小方向に変化したことは、契約更新時にXの雇用を継続しない合理的な理由となり得るものといえる。

3 本件労働契約においては、1回の更新がされたのみであり、かつその労働機関も通算で2年5か月にとどまり、更新後の期間はわずか5か月であり、多数回の更新や長期間の雇用継続があったとはいえず、更新回数・通算労働期間の観点からは、Xにおいて本件労働契約の更新に対する合理的な期待が生ずるものとはいえない。

上記判例のポイント1のとおり、常用性は肯定されたものの、有期雇用の選択や待遇の合理性から原告の更新に対する合理的期待を否定しました。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。