おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。
今日は、シフト制勤務医の勤務日・勤務時間削減の有効性について見ていきましょう。
医療法人社団新拓会事件(東京地裁令和3年12月21日・労判1266号44頁)
【事案の概要】
本件は、Y社とアルバイトの雇用契約を締結していた医師であるXが、Y社から一方的に勤務日及び勤務時間を削減されるという労働条件の切り下げを受けた後に違法に解雇されたと主張して、賃金支払請求権に基づき差額賃金369万9952円+遅延損害金の支払を求め、解雇予告手当支払請求権に基づき解雇予告手当130万6938円+遅延損害金の支払を求め、付加金支払請求権に基づき付加金130万6938円+遅延損害金の支払を求め、上記労働条件の切下げ及び上記解雇が違法であるとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき損害1768万3256円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
1 Y社は、Xに対し、189万9833円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xに対し、30万円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 Y社は、Xが、令和元年5月16日、Y社に対し、「了解しました。よろしくお願いいたします。」というLINE上のメッセージを送り、勤務日及び勤務時間の削減に同意したと主張する。
しかし、Xは、勤務日及び勤務時間の削減について同意していない旨をLINE上で明確に伝え、本件雇用契約書への押印を拒否しているのであり、Cとの交渉の過程で発せられた上記メッセージを取り出してこれをもってXが勤務日及び勤務時間の削減に同意したものと認めることはできない。
2 Y社は、Xが、令和元年5月15日、Y社に対し、「勤務につきましては週に3~4日程度定期的に入れれば幸いです。」というLINE上のメッセージを送ったことにより、週3日の勤務とすることに合意した旨主張する。
しかし、上記メッセージは、XがY社と交渉する経緯の中での妥協案として提案したものと認められるところ、Y社は、結局、この提案を受け容れたものとは認められないことに照らせば、上記メッセージをもってXとY社が週3日の勤務日とする合意をしたものと認めることはできない。
3 Y社がしたXの勤務日及び勤務時間の削減は、違法であるところ、これによりXは、約67%(日額2万8729円÷日額4万2618円=0.674…)もの減収を受けて多大な精神的苦痛を受けたものと認められ、Xの精神的苦痛を慰謝するには30万円が相当である。
珍しく慰謝料請求まで認められています。
LINE等で労働条件の不利益変更に同意したような記載があったとしても、雇用契約書への押印を拒否しているという事情からすれば、真意に基づく同意があったとはなかなか認定しにくいです。
日頃から顧問弁護士に相談の上、労働時間の考え方について正しく理解することが肝要です。