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今日は、中途採用者に対する当初の短期間での雇用契約が試用期間ではないとされた事案を見ていきましょう。
電通オンデマンドグラフィック事件(東京地裁令和2年6月23日・労経速2485号37頁)
【事案の概要】
本件は、Y社と労働契約を締結して就労していたXが、契約期間満了を理由に雇止めされたところ、主位的には、Y社との間で締結していた労働契約は有期労働契約ではなく、試用期間付無期労働契約であるから、期間満了により終了することはないと主張し、予備的には、仮に有期労働契約であるとしても、Y社による雇止めは客観的合理的理由を欠き、社会通念上の相当性もなく無効であると主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成31年4月から本判決確定の日までの賃金(月額22万4000円)+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xは、被告のB取締役が採用面接の際に原告に説明したように、本件労働契約の期間は「社員試用期間」であり、「業務内容や社風などを双方で確認する」ための期間であるから、その性質は試用期間であり、本件労働契約は解約権留保付きの無期労働契約であると解されるべきであると主張する。
しかしながら、法律上、有期労働契約の利用目的に特別な限定は設けられておらず、労働者の能力や適性を判断するために有期労働契約を利用することもできると解される。
特に、本件のような中途採用の場合には、即戦力となる労働者を求めていることが少なくなく、即戦力となることを確認できた者との間でのみ正社員としての労働契約を締結するための手段として、有期労働契約を利用することには相応の合理的理由があると認められる。
したがって、労働契約において期間を定めた目的が労働者の能力や適性の見極めにあったとしても、それだけでは当該期間が契約期間なのか、試用期間なのかを決めることはできないというべきである。
期間の定めのある労働契約が締結された場合に、その期間が存続期間なのか、それとも試用期間であるかは、契約当事者において当該期間の満了により当該労働契約が当然に終了する旨の合意をしていたか否かにより決せられるというべきである。
これを本件についてみるに、XとY社は、本件労働契約においてXの地位を6か月間の期間の定めのある有期契約社員と定めていることや、本件有期契約社員規則2条が有期契約社員の労働契約において定められる期間は「契約期間」であると明記し、同規則3条が原則として「契約期間満了時には当然にその契約は終了する。」、例外的に契約が更新される場合であっても、その回数は1回に、その期間は6か月以内に限られ、「この場合も、継続的な雇用ではない。」と明確に定めていることに照らすと、原告と被告は、本件労働契約を締結するに当たり、期間の満了により本件労働契約が当然に終了することを明確に合意していたと認められる。
2 確かに、Xが正社員として雇用されることを希望して、Y社と本件労働契約を締結したことは認められる。
しかしながら、その一方で、Xは、B取締役から、本件労働契約が6か月間の期間の定めのある有期契約社員を採用するものであり、その期間は延長されることがあるものの、最長で6か月(通算で1年間)に限られると説明されたことや、Cから採用条件の説明を受けた際、「2.雇用形態 有期契約社員」、「3.契約期間 2018年4月1日から2018年9月30日まで(6ヵ月)」などと記載された本件採用条件承諾書1を交付され、これに基づいて説明を受けた上、Xにおいてこれを持ち帰って自ら改めてその内容を確認・検討する機会を得た上で、これに署名して提出し、その際、その記載内容について特段の疑問を呈することもしなかったことに照らすと、本件労働契約の期間満了後に改めて正社員として採用されるチャンスはあると思ってはいたものの、本件労働契約がその期間の満了により当然に終了すること自体は十分に認識していたというべきである。
このことは、Xが、平成30年3月14日の面談の翌日にB取締役に宛てたメールにおいて、「御社では将来的に正社員として働くチャンスがあると思い面接させて頂きました。」と述べていることからもうかがうことができる。
結論部分のみを捉えて、安易に真似をするのはやめましょう。
しっかりと事案を読むと、そう簡単に試用期間目的で有期雇用契約とすることが広く認められているわけではないことがわかります。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。