Monthly Archives: 10月 2022

本の紹介1331 儲かっているラーメン屋は朝8時に掃除する!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

うまくいっている人たちのさまざまなルールが書かれています。

タイトルと異なり、内容は極めて王道です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生は短いのです。・・・時間が早く過ぎる。これからもっと加速されるはずです。人生に多くの機能は必要ありません。シンプルがいい。足し算はもう十分。引き算の発想を持ってあなたの人生のマニュアルを具体化してみてはどうでしょうか。」(95頁)

まさに「何をやるか」よりも「何をやらないか」がとても大切なのです。

足し算をしていくと、ルーティンに忙殺されてあっという間に1日が終わってしまいます。

リュックの中の荷物をできるだけ軽くしておくことが、「自分の時間」を作り出す秘訣です。

ただでさえ多忙な毎日の中でいかに「自分の時間」を守り抜くか。

自分の商品価値向上の準備をするための「自分の時間」は人生を大きく左右するほど極めて重要な時間です。

忙しい、忙しいと言っているうちに人生は終わってしまいます。

賃金236 就業規則に明記のない固定残業代の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、就業規則に明記のない固定残業代の有効性について見ていきましょう。

株式会社浜田事件(大阪地裁堺支部令和3年12月27日・労判1267号60頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、時間外割増賃金+遅延損害金、付加金+遅延損害金を請求した事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは、雇用契約に係る契約書等の記載のほか、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきである(最判平成30年7月19日同旨)。

2 Y社において就業規則はあるが賃金規程は存在せず、雇用契約に係る契約書等も存在しない
しかしながら、Y社は、入社面接の際、Xに対し、月給には36時間分のみなし残業手当が含まれることなどを説明したこと、XがY社に入社した後、年に2回、定期的面接が行われ、モニターに映し出された図表には、「※外勤手当について ・外回り営業マン及び施工者に対し、36時間分の残業代相当の外勤手当を支給 ・残業単価は、基本給与(外勤手当、調整手当を除く基準内給与)/160時間(月間基準労働時間)×1.25で算定」と記載されていたこと、Xが見たY社の求人募集に「※月給額には36時間分のみなし残業手当が含まれています。残業時間がそれより少なくても減額することはありません。」と記載されていたことが認められることから、Y社はXに対し、外勤手当は36時間分のみなし残業手当であることを説明し、Xもこれを理解していたと認められる
そして、Y社はXに対し、外勤手当と他の手当を区別して賃金を支給していたのであるから、固定残業代の有効要件を満たしているといえる。

3 Xは、固定残業代を有効とする要件として対価性や清算合意が必要であると主張するが、これらは別途固定残業代を有効とする要件とすべき法的根拠はないから、採用することはできない。

4 以上により、Y社における固定残業代は有効であり、Xに対して支給された外勤手当は月36時間分のみなし残業手当であったと認められる。

にわかには信じがたいですが、地裁の裁判例とはいえ、上記判例のポイント2の事情で固定残業制度が有効と判断されています。

控訴審判決を読んでみたいところです。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介1330 福沢諭吉に学ぶ賢者の智恵#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

まさに福沢諭吉さんの教えが書かれた本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとによってできるものなり」(84頁)

これほど当たり前のことでも、福沢諭吉さんが言うと、もっともらしく聞こえます。

そりゃそうだ、というお話です。

大人になってほとんど勉強しない国、日本。

今後ますます衰退していくのも想像に難くありません。

有期労働契約115 雇止め法理の適用が否定され、雇止めが有効と判断された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、雇止め法理の適用が否定され、雇止めが有効と判断された事案を見ていきましょう。

学校法人沖縄科学技術大学院大学学園事件(那覇地裁令和4年3月23日・労経速2486号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社との間で有期雇用契約を締結し、1度の更新を経たものの、Y社から平成31年3月31日の雇用期間満了をもって雇止めをされたところ、本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないなどと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇止め後の賃金+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社ではXの業務に限らず、原則として常勤職員を抑制し、任期制職員が採用されていることはY社の財源が国費による補助金に依存していることに伴う人事上の制約に基づくものとして、やむを得ない側面があるものといえる。
また、本件労働契約が看護師としての一定の経験を有する者という特定のスキルの所持者を対象とするものであり、その賃金が年俸450万円(月額37万5000円)とXの経験・スキルに相応する金額といえることからすると、本件労働契約は、その業務が常用性を有していたとしても、Y社が雇用形態として有期雇用を選択したことに合理性を欠くとはいえない。

2 Y社のクリニックは、平成29年7月末日付けで医師不在のために閉院となり、その後、令和元年6月3日には再開したものの、再開後は予約制とされ、開院時間についても、従前の週16時間が週10時間に変更された。XはY社のクリニックの職員として雇用されたため、雇用期間中にクリニックの運営状況が縮小方向に変化したことは、契約更新時にXの雇用を継続しない合理的な理由となり得るものといえる。

3 本件労働契約においては、1回の更新がされたのみであり、かつその労働機関も通算で2年5か月にとどまり、更新後の期間はわずか5か月であり、多数回の更新や長期間の雇用継続があったとはいえず、更新回数・通算労働期間の観点からは、Xにおいて本件労働契約の更新に対する合理的な期待が生ずるものとはいえない。

上記判例のポイント1のとおり、常用性は肯定されたものの、有期雇用の選択や待遇の合理性から原告の更新に対する合理的期待を否定しました。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介1329 危険な二人#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

お二人の対話形式となっています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どの業界でも、ルールというのはその時々の大手が作ったものだから、それにのっとって試合をしても勝てるわけがない。」(206頁)

これはすべての業界にあてはまるのではないでしょうか。

多くの場合、強者に都合の良いルールとなっていますので、その中で頭角を現すためには、強者と同じ戦い方では箸にも棒にもかかりません。

常に自分のポジショニングを理解した上で戦い方を決める必要があります。

20代と40代で戦い方が同じわけがないのです。

労働時間80 シフト制勤務医の勤務日・勤務時間削減の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、シフト制勤務医の勤務日・勤務時間削減の有効性について見ていきましょう。

医療法人社団新拓会事件(東京地裁令和3年12月21日・労判1266号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社とアルバイトの雇用契約を締結していた医師であるXが、Y社から一方的に勤務日及び勤務時間を削減されるという労働条件の切り下げを受けた後に違法に解雇されたと主張して、賃金支払請求権に基づき差額賃金369万9952円+遅延損害金の支払を求め、解雇予告手当支払請求権に基づき解雇予告手当130万6938円+遅延損害金の支払を求め、付加金支払請求権に基づき付加金130万6938円+遅延損害金の支払を求め、上記労働条件の切下げ及び上記解雇が違法であるとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき損害1768万3256円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、189万9833円+遅延損害金を支払え。

 Y社は、Xに対し、30万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、Xが、令和元年5月16日、Y社に対し、「了解しました。よろしくお願いいたします。」というLINE上のメッセージを送り、勤務日及び勤務時間の削減に同意したと主張する。
しかし、Xは、勤務日及び勤務時間の削減について同意していない旨をLINE上で明確に伝え本件雇用契約書への押印を拒否しているのであり、Cとの交渉の過程で発せられた上記メッセージを取り出してこれをもってXが勤務日及び勤務時間の削減に同意したものと認めることはできない。

2 Y社は、Xが、令和元年5月15日、Y社に対し、「勤務につきましては週に3~4日程度定期的に入れれば幸いです。」というLINE上のメッセージを送ったことにより、週3日の勤務とすることに合意した旨主張する。
しかし、上記メッセージは、XがY社と交渉する経緯の中での妥協案として提案したものと認められるところ、Y社は、結局、この提案を受け容れたものとは認められないことに照らせば、上記メッセージをもってXとY社が週3日の勤務日とする合意をしたものと認めることはできない。

3 Y社がしたXの勤務日及び勤務時間の削減は、違法であるところ、これによりXは、約67%(日額2万8729円÷日額4万2618円=0.674…)もの減収を受けて多大な精神的苦痛を受けたものと認められ、Xの精神的苦痛を慰謝するには30万円が相当である。

珍しく慰謝料請求まで認められています。

LINE等で労働条件の不利益変更に同意したような記載があったとしても、雇用契約書への押印を拒否しているという事情からすれば、真意に基づく同意があったとはなかなか認定しにくいです。

日頃から顧問弁護士に相談の上、労働時間の考え方について正しく理解することが肝要です。

本の紹介1328 レバレッジ時間術#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

レバレッジシリーズ、懐かしいですね。

いかに時間を作り出し、いかに多くの成果を生み出すか。

日々、忙しい、忙しいと嘆いている方は、是非読んでみましょう。

忙しくて本を読む時間なんてないでしょうか(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・ルーチンワークというものは、ほうっておけばどんどん増えていきます。ただ漫然と、それまでと同じ時間をかけていたら、重要な仕事や自分の楽しみのために使える時間は削られていきます。1日24時間の枠は変わらないので、当然、仕事の成果は減っていきます。いわば資産がマイナスになって、負債が雪だるま式に増えていくようなものです。」(34頁)

自由な時間が有り余っている人は別として、多くの方は、日々、あれやこれやと忙しいわけです。

常に時間に追われている中で、どうやって時間を捻出し、その時間を何に費やすか、という問題は、その人の人生を大きく左右するくらい大切なことです。

時間を捻出する際に、まず決めなければいけないのは、「何をやるか」ではなく、「何をやらないか」です。

換言すれば、「優先順位の切り替え」が必要です。

まずはここから着手しない限り、自由な時間は決して生まれません。

不当労働行為296 横領等を理由とする組合の分会長を懲戒解雇処分としたことが不当労働行為にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、横領等を理由とする組合の分会長を懲戒解雇処分としたことが不当労働行為にあたるとされた事案を見ていきましょう。

樽本機工事件(大阪府労委令和3年1月22日・労判1266号122頁)

【事案の概要】

本件は、横領等を理由とする組合の分会長を懲戒解雇処分としたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 F分会長が本件解体下架工事においてQから支払われたスクラップ代金の一部をG次長から受け取ったことが、懲戒解雇処分に値する着服、横領であると判断するには、なお証拠不十分であると言わざるを得ず、そうした会社の判断が妥当であるかどうかについては、疑問の残るところである。

2 本件懲戒解雇処分は、団交において労使関係の運営に係る事項を中心に労使間の主張の相違が解消されない中で、会社が組合に対して一方的に否定的な感情及び警戒感を抱いている状況において、当日行われる予定の第3回団交を意識してF分会長に通知され、かつ、分会結成通知の翌日から準備を始めて、3か月足らずという極めて近接した時期になされ、その理由の合理性については疑問が残り、その手続が合理性を欠き、さらに、その結果として、組合員でない他の4名の従業員に対する処分との間には大きな不均衡が存在するのであるから、会社の不当労働行為意思に基づいてなされたものとみるべきであって、組合員であるが故の不利益取扱いに当たり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。

組合員に対する懲戒解雇の不当労働行為該当性は、一般的な懲戒解雇の有効性判断と特に大きな違いはありません。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1327 仕事のヒント#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

タイトルのとおり、著者が考える仕事をうまく進めるヒントが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

半年後のあなたは、いま、この瞬間に決まっている。
半年後の計画がどれだけ具体的に決まっているかで、その人の半年後がわかる。半年後のイメージがぼんやりしている人は、半年後もぼんやりしている。半年後のイメージがクリアな人は、半年後、そのイメージ以上に成長している。」(150頁)

40歳にもなると、これまで自分の価値の向上に努めてきた人たちと、そうでない人たちとでは、もはや如何ともし難いくらいの差が生じてしまっているように感じます。

20代、30代で、どれだけの準備をしてきたか。

日々、忙しい中で、いかに自分の価値を高めるために時間を費やしてきたか。

もうほとんどこの点に尽きるのではないでしょうか。

国力の低下は火を見るよりも明らかです。

すでに国外への出稼ぎについて報道されるようになっている状況です。

老後どころではなく、まさに今をどのように生きていくのか、そのためにどのような準備をすべきかを考える必要があります。

不当労働行為295 組合の申し入れた団交に対し、法人が団交開催時刻および団交開催場所を指定したこと等が不当労働行為に当たらないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡) 

おはようございます。

今日は、組合の申し入れた団交に対し、法人が団交開催時刻および団交開催場所を指定したこと等が不当労働行為に当たらないとされた事案を見ていきましょう。

学校法人スバルが丘学園事件(大阪府委令和3年2月15日・労判1266号121頁)

【事案の概要】

本件は、組合の申し入れた団交に対し、法人が団交開催時刻および団交開催場所を指定したこと等が不当労働行為にあたるかが争われた事案を見ていきましょう。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 法人は、就業時間内に団交を行うことで差しさわりがある点を示している一方、組合は、法人が提案する午後6時からの団交開始により、いかなる不利益や不都合があるかを具体的に示すことなく、就業時間内での団交開催を求め続けていたといえ、かかる組合の対応は、就業時間内での団交開催時刻が合意に達しなかったことについて、法人のみに責任があるとはいえない

2 法人が神戸市勤労会館を団交開催場所として提案したことは合理的であったといえ、また、神戸市勤労会館で団交を開催することにより、組合又は少なくとも本件組合員3名に対し格別の不利益をもたらすとはいえず、さらに、法人は、組合が提案する場所以外を指定する理由を組合に一定説明していたといえるのであるから、法人が提案した神戸市勤労会館も団交の開催場所として認め得るところである。
したがって、法人が、神戸市勤労会館での団交開催を主張し、組合の本校内会議室での開催の求めに応じなかったからといって、かかる法人の対応を不合理であったということはできない
組合は、本校会議室以外の場所で団交を開催することで、組合又は組合員が、いかなる不利益を被るかについて具体的に提示することなく、本校会議室での団交開催を求め続けたといえ、かかる組合の対応は、団交の開催場所について労使で協議して決定するという姿勢に欠けていたといわざるを得ない
以上のことからすると、団交開催場所について合意に達しなかったことについて、法人のみ責任があるとはいえない。

開催時間や開催場所を巡って紛争化するケースは少なくありません。

一般的な考え方は、上記命令のポイントのとおりですので、しっかり押さえておきましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。