おはようございます。
今日は、パワハラ等に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見ていきましょう。
山九事件(東京地判令和3年12月24日・労判ジャーナル123号32頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員が、Y社に対し、内部告発を契機としてY社から差別的取扱いをされ、長期にわたって不当な人事考課が繰り返されて昇格できないという不利益等を受け、かつ、Y社の従業員からパワーハラスメントを受けたと主張して、雇用契約上の平等的取扱義務等に違反する債務不履行又は不法行為に基づき、また、パワハラについては職場環境維持義務等違反の債務不履行又は使用者責任に基づき、損害賠償金660万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xは、Y社から、長期にわたりXに対する不当な人事考課を繰り返されて昇格させない、現場就労をさせない、残業申請をさせないという差別的ないし不利益取扱いをされたと主張するが、人事考課の内容自体は、年度毎のXの業務遂行状況、業務態度及びトラブル等の出来事を踏まえ、合理的な人事評価がされてきたと認められ、Xには協調性の欠如や規律軽視の態度、独善的な振舞い、コミュニケーション能力の欠如が明らかであり、Xを再び建設現場に配置すれば、多数の関係者に危険を招き、客先の信頼を失いかねないというY社の判断は正当な理由に基づくものであり、Xは建設現場における監督者又は監督補助者としての適格性を欠いているといわざるを得ず、Y社がXを建設現場での業務に配置しなかったとしても、これは正当な人事権の行使であり、また、Y社がXに残業申請をさせない取扱いをしたことを認めるに足りる証拠はない等から、Y社のXに対する取扱いが雇用契約上の平等取扱義務、人格尊重義務等に違反する債務不履行又は不法行為を構成するとのXの主張は、これを認めるに足りる証拠がなくいずれも採用することができない。
使用者とすると、上記裁判所の事実認定につながる証拠をどれだけ事前に準備できているかがポイントとなります。
証拠を残すという意識が希薄なまま労務管理を行うと、いざ訴訟になった時に厳しい戦いとなります。
日頃の労務管理におけるエビデンスの残し方については顧問弁護士に相談をすることをお勧めいたします。