Daily Archives: 2022年8月22日

守秘義務・内部告発12 元従業員による顧客情報の利用及び第三者への開示・提供の差止めが認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、元従業員による顧客情報の利用及び第三者への開示・提供の差止めが認められた事案を見ていきましょう。

X事件(横浜地裁令和4年3月15日・労経速2480号18頁)

【事案の概要】

本件は、美容師であるXを雇用し同人をQ1が運営する美容室において就労させていたY社が、Xが退職後において、Q1の顧客の情報を利用し、また、第三者に開示し、提供するおそれがあると主張して、Xに対し、雇用契約上の秘密保持特約に基づく差止請求権を被保全権利として、別紙1記載の情報の利用等の差止めの仮処分を申し立てた事案である。

【裁判所の判断】

Xは、令和6年3月15日が経過するまで、神奈川県内及び東京都内において、Xが就労又は運営する美容室等の顧客にする意図で別紙1記載の顧客に電話をかける、電子メールを送信するという営業活動及び別紙1記載の情報の全部又は一部について第三者に開示、提供をしてはならない。

【判例のポイント】

1 Y社は、Q1との間で、Q1が運営する美容室の運営を委託されているところ、Y社の被用者がその退職後に美容室の顧客の情報を利用し又は第三者に開示、提供するなどして美容室の顧客の情報が漏洩した場合、Q1との信頼関係が棄損され、業務委託の範囲の縮小や契約解除などに至るおそれがあると認められる。これらは、事後的な金銭賠償では償うことができないものというべきである。

2 そして、Xは、Y社との雇用契約終了後の就業先を探している中で、本件店舗の顧客の情報を携帯電話に記録しているのであるから、Xが新たな就業先において別紙1記載の情報を利用して営業活動をするおそれ及び就業先などの第三者に別紙1記載の情報を開示、提供するおそれがあると認められる。
よって、Xによって本件店舗の顧客の氏名、住所、電話番号が利用され又は第三者に開示、提供された場合には、Y社が著しい損害を被るおそれがあることが認められる。

実際にここまでの対応をとるケースは少ないですが、是非、参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談をする体制を整えておき、速やかに相談することにより敗訴リスクを軽減することが重要です。