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賃金226 事実上の離婚状態にある場合に中退共の退職金や遺族給付金等の支給を受けるべき「配偶者」に該当しないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、事実上の離婚状態にある場合に中退共の退職金や遺族給付金等の支給を受けるべき「配偶者」に該当しないとされた事案を見ていきましょう。

独立行政法人勤労者退職金共済機構ほか事件(東京地裁令和4年1月26日・労経速2479号33頁)

【事案の概要】

本件は、a社の従業員であった亡D(平成26年10月15日死亡)の配偶者であるXが、①亡Dが被共済者であるY1機構に対し、中小企業退職金共済法に基づく退職金928万2803円及+遅延損害金の支払を求め、②亡Dが加入していたY2基金に対し、Y2基金規約に基づく遺族給付金として503万0300円+遅延損害金の支払を求め、③亡Dが加入していたY3基金に対し、Y3基金規約に基づく遺族一時金として243万3000円+遅延損害金の支払を求める事案である

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 中小企業退職金共済法は、中小企業の従業員の福祉の増進等を目的とするところ(1条)、退職が死亡によるものである場合の退職金について、その支給を受ける遺族の範囲と順位の定めを置いており、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む配偶者を最先順位の遺族とした上で(14条1項1号、2項)、主として被共済者の収入によって生計を維持していたという事情のあった親族及びそのような事情のなかった親族の一部を順次後順位の遺族としている(同条1項2号から4号まで、2項)。
このように、上記遺族の範囲及び順位の定めは、被共済者の収入に依拠していた遺族の生活保障を主な目的として、民法上の相続とは別の立場で受給権者を定めたものと解される。
このような目的に照らせば、上記退職金は、共済契約に基づいて支給されるものであるが、その受給権者である遺族の範囲は、社会保障的性格を有する公的給付の場合と同様に、家族関係の実態に即し、現実的な観点から理解すべきであって、上記遺族である配偶者については、死亡した者との関係において、互いに協力して社会通念上夫婦としての共同生活を現実に営んでいた者をいうものと解するのが相当である(最高裁昭和58年4月14日第一小法廷判決参照)。
そうすると、民法上の配偶者は、その婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない場合、すなわち、事実上の離婚状態にある場合には、中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者に当たらないものというべきである(最高裁判所令和3年3月25日第一小法廷判決参照)。

ということです。

少しマニアックではありますが、弁護士、社労士としては知っておく必要があります。

退職金や遺族給付金等については顧問弁護士に相談をしましょう。