Daily Archives: 2022年7月20日

不当労働行為290 派遣元会社が、解雇の撤回等を議題とする団交申入れに応じなかったことが不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、派遣元会社が、解雇の撤回等を議題とする団交申入れに応じなかったことが不当労働行為とされた事案を見ていきましょう。

アウトソーシング事件(中労委令和3年9月15日・労判1262号95頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元会社が、解雇の撤回等を議題とする団交申入れに応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件団体交渉申入れの交渉事項は、Aが会社に解雇されたものと理解した上で、①会社に対し解雇の撤回を求め、併せてこれに関する会社の見解の説明を求めるものとし、②会社に対し、Z社に働きかけてAの職場復帰を早期に実現させるように努めることを求め、併せてこれに関する会社の見解の説明を求めるものと解される。これらの交渉事項は、Aの待遇に関する事項で、かつ、会社が実行したり説明したりすることが可能なものであるから、義務的団交事項に当たる。
したがって、Aの雇用主である会社は、本件団体交渉申入れに対し、原則として速やかに団体交渉に応じて、労使双方が同席する場で、交渉事項に関する会社の立場ないし見解を組合に直接伝達して協議及び交渉を行う義務を負うものと解される。

2 会社は、Aを解雇しておらず、雇用契約が継続しているから、解雇の撤回という交渉事項は、会社が処分可能なものではなく、義務的団交事項に当たらないから、本件団体交渉申入れに応じなかったとしても、不当労働行為に当たらないと主張する。
しかし、解雇の撤回を求めるとの交渉事項は、義務的団交事項に当たる。しかるところ、会社は、Aとの雇用契約の途中解除に関する組合の認識が誤りであるというのであるから、本件団体交渉申入れに応じて、団体交渉の場で、組合に対し会社の見解を示して説明すべきであった。したがって、会社の上記主張は採用することができない。

解雇の撤回を求めるとの交渉事項が義務的団交事項に当たることは明らかです。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。