おはようございます。
今日は、配転命令拒否を理由とする懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
NECソリューションイノベータ事件(大阪地裁令和3年11月29日・労経速2474号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員であるXが、配転命令を拒否したことを理由として懲戒解雇されたことにつき、同懲戒解雇が無効であるとして、労働契約上の地位を有することの確認、同懲戒解雇後の賃金及び賞与並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求めるとともに、多数の従業員の面前で懲戒解雇通知書を読み上げられたことが不法行為に当たるとして、民法709条に基づき損害賠償を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 c社グループの時価総額は厳しい競争の中で大きく低下しており、平成28年度に策定した中期経営計画を翌年度である平成29年に撤回せざるを得ない状況にあったところ、そのような状況にあれば、経営状況を改善するために様々な方策を講じる必要性があるといえる。実際、c社グループにおいては、平成24年に特別転進支援施策を実施して人員削減を図るなどしており、同施策に応じて多数の従業員が応募するという状況にあった。
そして、c社グループがそのような状況にあることに照らせば、拠点(事業場)を集約して、組織の構造改革や業務の効率化を図ることも経営改善に向けて講じられる方策の一つであるということができる。
本件においては、統合オペレーションサービス事業部について、関西、北海道及び東海の三つの事業場を閉鎖し、東北、北陸、九州、沖縄及びh事業場の五つの事業場に集約されることとなったところ、閉鎖する事業場の選定において、不自然・不合理な事情は見受けられない。
また、拠点集約に伴い、事業場を閉鎖することとした場合には、閉鎖される事業場に勤務していた従業員の処遇が問題となるところ、使用者としては、従業員の失業を可及的に回避するため、ほかの事業場への配転、出向、転職支援等の方策を検討することとなる。・・・閉鎖する事業場である関西・西日本オフィスに勤務していた従業員を、h事業場に配転するということは、業務の効率化や、閉鎖される事業場に勤務していた従業員の雇用の維持という観点からみても、合理的な方策であるということができる。
以上からすると、本件配転命令について、業務上の必要性があったということができる。
2 本件懲戒解雇は、Xが本件配転命令に応じなったことを理由とするものであるところ、本件配転命令が有効であることは前記で説示したとおりである。
そして、Y社の就業規則においては、業務上必要がある場合には、配転を命じることがあること、職務上の指示命令に反して職場の秩序を乱した場合には、懲戒解雇事由に該当するとされているところ、前記認定したとおりの経過を経て配転命令がなされたにもかかわらず、同命令に応じないという事態を放置することとなれば、企業秩序を維持することができないことは明らかである。
以上を総合考慮すれば、本件懲戒解雇は、客観的に合理性があり、かつ社会通念上も相当なものといえ、懲戒権の濫用に当たるということはできない。
リストラの一環として行われた配転命令が有効と判断され、当該配転命令に応じなかったことが懲戒解雇事由に該当すると判断されました。
リストラを進める場合には事前に顧問弁護士に相談し、正しく進めることをおすすめいたします。