おはようございます。
今日は、転居を伴う異動命令に保全の必要性が認められなかった事案を見ていきましょう。
学校法人コングレガシオン・ド・ノートルダム事件(福岡地裁小倉支部令和3年12月15日・労経速2473号13頁)
【事案の概要】
本件は、Q1市及びQ2市(Q1、Q2は転居を必要とする遠隔地に所在する)にそれぞれ学校を設置する学校法人であるY社が、Q1市所在の学校で勤務していたXに対し、Q2市所在の学校での勤務を命じたところ、Xが、同勤務命令が無効であると主張して、Q2市所在の学校で勤務すべき義務のないことを仮に定めるよう求めた事案である。
【裁判所の判断】
申立て却下
【判例のポイント】
1 Xは、Q1市内に自宅を保有しており、Q2市に転居することにより転居費用やQ2市での住居の賃料等、相応の費用が発生することが想定される。上記費用のうち、転居費用はY社から支給されるものの、Y社の住宅手当の規程に照らすと、住居の賃料の全額が支給されるとは限らないことから、本件配転命令に従って転居することによりある程度の経済的負担がXに生ずる可能性が高いと認められる。
しかしながら、Xは、毎月43万7409円の賃金を受領しており、本件配転命令に基づく異動の前後で賃金の受領額に変更はないのであるから、Xの世帯構成を勘案すると、上記経済的負担を賄えない特段の事情があるとは認められない。
Xは、独身であることに加え、平成28年度以降、Bにおける授業を担当しておらず、令和4年度においても担当予定授業がなく、その他本件において、Q1市から転居できない特段の事情の疎明はない。
2 以上からすると、転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えるものであることを考慮しても、本件配転命令に従ってQ2市において就労することにより、Xに著しい損害又は急迫の危険が生じるとはいえず、保全の必要性が認められない。
転居を伴う配転であったとしても、裁判所は、よほど不合理と認められる場合でなければ、基本的には会社の裁量を尊重します。
北海道から沖縄まで2~3年で配転している裁判官からすると、「まあ、そういうこともあるよね」という感じでしょうか。
転居を伴う配転命令の対応については顧問弁護士に相談しながら行うことをおすすめいたします。