Daily Archives: 2022年5月20日

賃金225 賃金減額の合意の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、賃金減額の合意の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

メイト事件(東京地裁令和3年9月7日・労判ジャーナル120号59頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されているXが、平成30年4月分以降の基本給を従前の月額40万円から月額34万円に減額されたことの無効を主張して、Y社に対し、当該雇用契約に基づき、①同月分から令和3年5月分までの賃金の差額分(月額6万円)等の支払を求めるとともに、②XがY社に対し減額前の基本給月額40万円の支払をうける雇用契約上の地位にあることの確認を求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認請求却下

差額賃金等支払請求認容

【判例のポイント】

1 本件賃金減額に係る合意の有無について、Y社は、Xに理由を説明した上で、本件賃金減額をしたところ、本件訴訟の提起に至るまでX又はX代理人から何の異議も述べられなかったなどとして、Xが本件賃金減額について黙示に合意した旨を主張するが、労働者が賃金の減額について長期間異議を述べずにいたことをもって直ちに当該賃金減額について黙示に合意したといえるものではなく、そして、Xが本件賃金減額を了承したことを窺わせる積極的言動に及んだ事実を認めるに足りる証拠はなく、むしろ、Y社がXに減額後の賃金を明記した契約書への署名押印を求めたところ、Xがこれに応じず、Y社から交付された「質問状」と題する書面に「雇用契約は、従前締結したものがあるので、再契約は必要ないと思います」、「賃金については従前どおりでお願いします」などと記載してY社に提出した事実が認められるから、Xが本件賃金減額について黙示に合意したということはできない

労働条件の中でも賃金に関する不利益変更をするのは、本当に難しいです。

労働者の同意の効力について、裁判所はとても厳しく解釈しますので注意しましょう。

「給料は一度上げたら最後。下げることはできない。」と認識しておくくらいがちょうどいいです。

賃金の減額をする場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。