おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。
今日は、就労意思喪失と解雇無効地位確認請求の帰趨に関する裁判例を見ていきましょう。
エヌアイケイ事件(大阪地裁令和3年9月29日・労判ジャーナル120号48頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、Y社がした普通解雇が無効である旨主張し、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求め、また、Xが、Y社の代表取締役であるB及び取締役であるCに対し、同人らが不法行為に基づく損害賠償責任を負い、あるいは、取締役として会社法429条に基づく損害賠償責任を負うものであり、それら各損害賠償責任に係る支払義務がY社の賃金支払義務と不真正連帯関係にある旨主張し、不法行為又は会社法429条に基づく、上記未払賃金と同額の損害金等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
地位確認請求棄却
未払賃金請求一部認容
【判例のポイント】
1 本件解雇後におけるXの就労の意思について、Xは、本件解雇の直後である令和元年7月9日、本件解雇が無効であることを前提とし、Y社に対して労働契約上の権利を有する地位確認を求める旨の本件訴えを提起しているから、Xが、本件解雇時において、既に就労の意思を喪失していたと認めるには足りないが、Xが独自にコンピューターシステムの技術者の紹介等を行うようになり、その結果、翌々日支払の約定の下、実際にY社での就労時を大きく上回る収入を得るようになった最初の月である令和元年12月をもって、XはY社での就労の意思を喪失したと認めることが相当である。
解雇事案において、解雇後一定期間経過後に他社へ転職した従業員について、就労意思の喪失が問題となります。
過去の裁判例を見る限り、この点の裁判所の判断は担当裁判官によって認定結果が異なります。
今回の事案のように、Y社の就労時を大きく上回る収入を得るようになったという事情がある場合には、比較的就労の意思の喪失が認定される傾向にあります。
解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。