おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。
今日は、通勤による新型コロナウイルスへの感染不安を訴える派遣労働者に対する健康配慮義務違反及び雇止めの違法性がいずれも否定された事案を見ていきましょう。
ロバート・ウォルターズ・ジャパン事件(東京地判令和3年9月28日・労経速2470号22頁)
【事案の概要】
本件は、労働者派遣事業等を目的とするY社との間で期間の定めのある労働契約を締結していたXが、Y社に対し、Xが新型コロナウイルスへの感染を懸念して在宅勤務を求めていたにもかかわらず、Xを派遣先会社に出社させたり、在宅勤務等を希望するXを疎んで雇止めにしたり、雇止めに関しその理由を具体的に説明しなかったりしたと主張し、これらはXに対する一連の不法行為に当たるとして、不法行為に基づき慰謝料450万円及び弁護士費用45万円の合計495万円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Y社や本件派遣先会社において、当時、Xが通勤によって新型コロナウィルスに感染することを具体的に予見できたと認めることはできないというべきであるから、Y社が、労働契約に伴う健康配慮義務又は安全配慮義務(労働契約法5条)として、本件派遣先会社に対し、在宅勤務の必要性を訴え、Xを在宅勤務させるように求めるべき義務を負っていたと認めることはできない。
したがって、仮に、Y社が本件派遣先会社に対しXの在宅勤務の実現に向けて働きかけをしなかったという事情があったとしても、これをもって違法ということはできない。
2 本件労働契約は、令和2年3月2日から同年3月31日までの期間を定めて締結されたものであり、本件雇止めまで一度も更新されたことがなかったことや、本件労働契約において更新を予定した条項は定められていなかったことに照らすと、本件雇止めの時点において、Xに雇用継続への合理的期待があったと認めることはできないというべきである。
コロナに対する不安の度合いは、人によってまちまちですので、Xの要望は理解できないことはありません。
もっとも、コロナに限らず、風邪もインフルエンザも、マスクをしようかしまいが、ワクチンを接種しようがしまいが、感染する人は感染してしまいます。その逆もまたしかり。
判断が難しい労務管理については、速やかに顧問弁護士に相談することが大切です。