Daily Archives: 2022年3月25日

有期労働契約110 無期転換直前の雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、無期転換直前の雇止めの適法性に関する裁判例を見てみましょう。

日本通運(川崎・雇止め)事件(横浜地裁川崎支部令和3年3月30日・労判1255号76頁)

本件は、Y社との間で期間の定めのある雇用契約(最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない旨の条項が付されていた。)を締結し、4回目の契約更新を経て勤務していたXが、Y社に対し、Y社が当初の雇用契約から5年の期間満了に当たる平成30年6月30日付けでXを雇止めしたことについて、①上記条項は労働契約法18条の無期転換申込権を回避しようとするもので無効であり、Xには雇用継続の合理的期待があった、②同雇止めには客観的合理性、社会通念上の相当性が認められないなどと主張し、Y社による雇止めは許されないものであるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同契約に基づく賃金請求権に基づき、上記雇止め後である同年8月25日から毎月25日限り月額賃金26万9497円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件においては、通常は労働者において未だ更新に対する合理的期待が形成される以前である本件雇用契約締結当初から更新上限があることが明確に示され、Xもそれを認識の上本件雇用契約を締結しており、その後も更新に係る条件には特段の変更もなく更新が重ねられ、4回目の更新時に、当初から更新上限として予定されたとおりに更新をしないものとされている
また、Xの業務はある程度長期的な継続は見込まれるものであるとしても、b配送センターの事業内容や従前の経営状況に加え、Xの担当業務の内容や本件雇用契約上の更新の判断基準等に照らせば、Xの業務は、顧客の事情により業務量の減少・契約終了があることが想定されていたこと、Xの業務内容自体は高度なものではなく代替可能であったことからすれば、恒常的とまではいえないものであった。
加えて、b配送センターにおいて就労していた他の有期雇用労働者はXとは契約条件の異なる者らであった。その他、Y社横浜支店において不更新条項が約定どおりに運用されていない実情はうかがわれない
このような状況の下では、Xに、本件雇用契約締結から雇用期間が満了した平成30年6月30日までの間に、更新に対する合理的な期待を生じさせる事情があったとは認め難い

2 労働契約法18条は、有期契約の利用自体は許容しつつ、5年を超えたときに有期雇用契約を無期雇用契約へ移行させることで有期契約の濫用的利用を抑制し、もって労働者の雇用の安定を図る趣旨の規定である。このような趣旨に照らすと、使用者が5年を超えて労働者を雇用する意図がない場合に、当初から更新上限を定めることが直ちに違法に当たるものではない。
5年到来の直前に、有期契約労働者を使用する経営理念を示さないまま、次期更新時で雇止めをするような、無期転換阻止のみを狙ったものとしかいい難い不自然な態様で行われる雇止めが行われた場合であれば格別、有期雇用の管理に関し、労働協約には至らずとも労使協議を経た一定の社内ルールを定めて、これに従って契約締結当初より5年を超えないことを契約条件としている本件雇用契約について、労働契約法18条の潜脱に当たるとはいえない
したがって、同法の潜脱を前提とする公序良俗違反の原告の上記主張は理由がない。

雇用契約締結当初から更新回数の上限を設定し、かつ、例外的な運用をしていない場合には、本裁判例のように雇止めは有効と判断されます。

契約更新の途中でこれをやると逆の結論になりますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。