おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。
今日は、障害者就労支援施設等での泊まり込み時間が実労働時間として認められた事案を見ていきましょう。
グローバル事件(福岡地裁小倉支部令和3年8月24日・労経速2467号3頁)
【事案の概要】
本件は、Xらが、就労移行支援施設、グループホーム、自立準備施設等を運営しているY社に対し、①未払賃金(X1につき1112万8136円、X2につき2357万7345円)、②前記①に対する遅延損害金の支払、③付加金+遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。
【裁判所の判断】
Y社は、X1に対し、945万1705円+遅延損害金、付加金を支払え
Y社は、X2に対し、1637万9459円+遅延損害金、付加金を支払え
【判例のポイント】
1 Xらには、利用者の対応をしていない不活動時間もあると考えられるところ、利用者から対応を求められるタイミングは、あらかじめ明らかになっているものではなく、不活動時間においても、必要があれば利用者対応をすることが予定されているといえるから、労働契約上の役務の提供が義務付けられているとして、Y社の指揮命令下に置かれていたというべきであり、労働時間にあたる。
ただし、Xらにも朝食を取るなど、労働からの解放が保障されている時間があったと考えられるから、午前6時から午前8時30分までの間の30分は労働時間にあたらないというべきである。
2 平日の午後4時から午後9時までの間、Xらは、支援記録を欠いたり、夕食の配膳等を行ったりする他、利用者の入浴の見守り・介助を行っていたから、これらの時間は労働時間にあたる。
また、それ以外の不活動時間においても、介助等の利用者対応を求められるタイミングは、あらかじめ明らかになっているものではなく、不活動時間においても、必要があれば利用者対応をすることが予定されているといえるから、労働契約上の役務の提供が義務付けられているといえるとして、Y社の指揮命令下に置かれていたというべきであり、労働時間にあたる。
ただし、Xらも夕食を取ったり、風呂に入ったりしていたと考えられること、Xらは、週に3、4度、1度につき30分から1時間程度、自分の用事で外出していたことからすれば、Xらにも、労働からの解放が保障されている時間があったと考えられるから、少なくとも午後4時から午後9時までの間の1時間は労働時間にあたらないというべきである。
拘束時間が長い職業の場合、今回の事案同様、すごい金額になってしまいます。
このような施設は極めて多いと思います。
消滅時効の期間が伸長されていることを考えると今のうちに対策を考えないと経営破綻してしまいます。
労働人口がますます減っていくことからしますと、抜本的な解決はかなり難しいといえます。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。