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今日は、業務委託契約の性質が労働契約と認められ、契約解消(解雇)が無効とされた事案を見ていきましょう。
クリエーション事件(東京地裁令和3年7月13日・労経速2465号37頁)
【事案の概要】
本件本訴は、Y社との間で労働契約を締結していたと主張するXが、Y社が令和2年2月28日にした解雇は無効であると主張し、Y社に対し、労働契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、解雇日以降の賃金として、令和2年3月から本判決確定の日まで、毎月27日限り10万円(月額35万円から被告に対する貸金債務月額25万円を控除した後の金額)+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
解雇無効
【判例のポイント】
1 被告は、主にクイックまつげエクステをフランチャイズ展開する事業を営む株式会社であり、直営店舗のほか、加盟店(Y社から研修を受けて証明書の発行を受け、顧客に対して施術を行う店舗)及び代理店(Y社と加盟店を仲介する店舗)を通じてまつげエクステの事業を行っていたこと、Xは、令和元年8月ころから、Y社の事務所の鍵及び携帯電話を交付され、麹町所在の事務所又は恵比寿所在の直営店舗(サロン)において、本部長の肩書で、加盟店の管理(販促物の供給、連絡等)、事務用品の購入、広告及び販促物の作成、セミナー及び講習会のサポート並びにAの秘書業務等の業務を行っていたことが認められる。
2 そして、AはY社の代表取締役であること、X及びAとY社の代理店等が加入するLINEグループが20以上あり、XはAとの間でLINEグループにより、Y社の内部的事務、取引に係る予算及び発注、代理店その他の関係者との連絡等の業務に関するやり取りを行っていたこと、XとAは、LINEグループでのやり取りを通じて、頻繁に業務上の報告、連絡をしていたこと、Xが業務を行うに当たってはAから具体的な指示を受けることが多くあったことが認められ、これらの事情に照らせば、AはXに対して業務上の指揮命令を行う関係にあったと認められる。なお、Aは、X本人尋問において、Xに対し、自らが依頼したコピーを取ることを拒否したことを非難する旨の発言をしているところ、かかる発言からも、AがXに対して指揮命令を行う関係にあったことがうかがわれる。
3 また、Xは、休暇を取得する場合はAに報告し、Aの了承を得ていたこと、Aは、令和2年1月ころから、Xに対してタイムカードに打刻するよう求めており、同月28日、Xに対し、「ずいぶんまえから、タイムカードできるよえにしてくださいといいましたが、いつできるのでしょう。」、「きちんと皆んな8時間勤務で、お休みもまえもってわかるようにするために、タイムカードをかったのですが、全然いみがないです。」、「会社は早くても6時までは対応してもらいたいので今月はそのようにおねがいします。」、「タイムカードおしてください。」、「お昼とるとらないは、自由ですが、8時間はいるようにしてください。」などのメッセージを送信したことが認められる。
上記の事実によれば、Xは、Aから具体的な指示を受けてY社の業務を遂行していたと認められ、仕事の依頼や業務の指示に対する諾否の自由を有していたとは認められない。また、Xは、Y社における勤務日や勤務時間について一定の拘束を受けていたというべきであり、これらの事情を考慮すれば、本件契約の性質は労働契約と認めることができる。
労働法規適用回避目的で、業務委託契約を選択する方が少なくありませんが、そのうち、雇用契約と業務委託契約の違いを十分に理解している方がどれほどいるでしょうか。
労働者性に限らず、管理監督者、固定残業代、変形労働時間制等、多くの労働紛争は、使用者の無知から生じているのが現実です。
労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。