Monthly Archives: 2月 2022

管理監督者52 年収約1100万円の従業員の管理監督者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、年収約1100万円の従業員の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

スター・ジャパン事件(東京地裁令和3年7月14日・労判ジャーナル117号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結して就労している従業員Xが、Y社に対し、平成28年6月から令和元年11月までの期間における時間外労働、深夜労働及び休日労働に対する割増賃金の不払がある旨を主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、未払割増賃金等の支払を求めるとともに、労働基準法114条に基づき、付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払割増賃金請求認容

付加金等請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの管理監督者性について、経営上重要な事項の決定、採用、人事考課、業務の割当て、労働時間の管理のいずれについてもXの権原や影響力は限定的なものであったといわざるを得ず、これに加え、Xの部下の人数は3ないし4名と少なく、Xの労働時間の中でマネジメント業務を行っている時間はわずかであり、Xは主として部下が担当する業務と同様の業務に従事していたと認められることを踏まえると、Xは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者ということはできず、また、Y社においてはフレックスタイム制が採用され、Xも同制度の適用対象となっているところ、Xは、Y社に対し、出社時刻及び退社時刻を申告し、B社長から勤務時間を記録した出勤簿の承認を受け、概ねフレックスタイム制の始業時間帯及び終業時間帯の間で出退勤しており、有給休暇についてもB社長の承認が必要とされていたということも踏まえると、Xには事故の労働時間についての裁量があったとはいい難いから、Xの待遇について、給与が年収1080万円ないし1170万2220円と比較的高額であることを考慮しても、Xが管理監督者に該当するとは認められない

2 Y社は、Xが、雇用契約当初からその後本訴提起の直前に至るまで一貫してY社がXを管理監督者として扱うよう誘導し、Xに対して時間外労働の抑制などの時間管理をする機会を奪わせ、他方で自分で勝手に労働時間を長くしてから、長期にわたりその状態を自ら放置して時間外の請求をすることなく、2年半以上過ぎてから請求したことを理由に、本件請求は禁反言の原則、信義則に違反する旨主張しているが、Xは、Y社に正社員として入社した当時、自己が残業代の支払を受けることができる立場ではないと認識してはいたものの、就労する中で管理監督者としての権原を有していないという認識に至ったことから本件請求を行ったというのであるから、入社後2年半以上過ぎてから請求したからといって、禁反言の原則や信義則に反するとはいい難く、また、Xが自ら不当に労働時間を長くしているとはいえないし、Xの時間外労働を抑制する機会を失ったというのも、Y社が管理監督者に該当しない者を管理監督者として扱ったことによる帰結にすぎないから、XのY社に対する割増賃金請求が信義則に反するということはできない。

年収が高い分、未払残業代の金額も自ずと跳ね上がります。

この程度の働き方では、開かずの扉はまず開きません。

労務管理は事前の準備が命です。顧問弁護士に事前に相談することが大切です。

本の紹介1243 クオリティ・カンパニー#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

8年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

タイトルからもわかるとおり、会社はかくあるべしということが書かれています。

理念的なことが書かれていますので、共感できるかどうかは読み手によると思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

願望は人それぞれ異なるが、真のリーダーは、自分中心、相手不在ではなく、どうしたら縁ある人を幸せにできるかを考え、それに対して本気で取り組むことで、相手の矢印(ベクトル)が変わり、協力関係を醸成していく。賢い計算高さより、人間的なハートがあれば与えて与えられる関係性を築くことができる。」(51頁)

崇高な理念はさておき、会社を潰さないことがまずは重要です。

ミッションだとかバリューだとかどれだけ並べたところで、会社が倒産してしまえば、元も子もありません。

10年先の大きな目標もいいですが、目の前の仕事をしっかりとやるという極めてシンプルな約束を守ることで十分な気がします。

労働災害109 店長の過重労働による死亡と会社・取締役に対する損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、店長の過重労働による死亡と会社・取締役に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

株式会社まつりほか事件(東京地裁令和3年4月28日・労判ジャーナル1251号74頁)

【事案の概要】

本件は、亡Aの相続人であるXらが、被告株式会社Y1の従業員であった亡Aが、Y1における長期間の過重労働により、不整脈による心停止を発症して死亡したため、これにより損害を被った旨主張して、①Y1に対しては債務不履行による損害賠償請求権に基づき、②Y1の代表取締役であったY2に対しては債務不履行による損害賠償請求権又は役員等の損害賠償請求権(会社法429条1項)に基づき、連帯して、X1においては2401万0975円+遅延損害金の支払を、X2においては3513万1830円+遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

被告らは、X1に対し、連帯して、2091万5568円+遅延損害金を支払え。

被告らは、原告X2に対し、連帯して、3093万5452円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y2は、Y1の代表取締役として、Y1の業務全般を執行するに当たり、Y1において労働者の労働時間が過度に長時間化するなどして労働者が業務過多の状況に陥らないようにするため、従業員の労働時間や労働内容を適切に把握し、必要に応じてこれを是正すべき措置を講ずべき善管注意義務を負っていたというべきであるところ、Y1の業務執行を一切行わず、亡Aの労働時間や労働内容の把握や是正について何も行っていなかったのであるから、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があり、これにより亡Aの損害を生じさせたというべきである
したがって、Y2は、会社法429条1項に基づき、Y1と連帯して、亡Aの死亡により生じた損害の賠償責任を負うというべきである。

2 これに対し、Y2は、亡Bに名義貸しをしたものにすぎず、Y1の取締役としての職務を行うことが予定されておらず、実際にも職務を行っていなかったから、Y2のAに対する重大な過失はないとも主張する。
そこで検討するに、Y2は、亡BからY1の設立に当たり名前を貸すように依頼を受けてこれを了承し、被告Y2においてY1の代表取締役の登記手続をされたものであり、Y1の経営に関与したり、役員の報酬を得たりしたことも一切なかったのであるから、Y2がY1の業務執行に関わることが一切予定されていない、いわゆる名目的な代表取締役であったことは、被告らが主張するとおりである。
もっとも、Y2は、亡Bからの上記依頼の内容について、Y1の役員になるのかもしれないとの認識を持ち、印鑑登録証も貸したことが認められるのであるから、Y1の代表取締役への就任自体は有効に行われたものであるといわざるを得ず、そうである以上、Y2がY1の代表取締役として第三者に負うべき一般的な善管注意義務を免れるものではない。仮に、Y2が、Y1の実質的な代表者であった亡Bから、Y1の業務執行に関わる必要がないとの説明を受けていたり、Y1から何らの報酬を得ていなかったりしたとしても、それはY1の内部的な取決めにすぎず、そのことからY2がY1代表取締役として負うべき第三者に対する対外的な責任の内容が左右されることはない

たとえ名目的な代表取締役であったとしても、それをもって責任を免れないことは争いのないところです。

労災が発生した場合に、会社のみならず、役員の責任追及をされることがありますので注意しましょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介1242 あなたがもし残酷な100人の村の村人だと知ったら#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

帯には「教えていますか?この国で生き延びる知恵と方法を。13歳から知っておきたい日本とお金の衝撃の真実!」と書かれています。

少し古い本ですが、現在の日本の状況がよくわかる本です。

大人が読んでもとても参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

大事なのは、そこに『所有』志向がかけらもなかったことだ。このことはこれから生きていく方向として、たいへん重要だと私は思う。これからの時代は、所有志向の人は負けていくしかない。何も持つな、借金するな、身軽を身上に、できれば魅力のなくなったサラリーマンなんてすっぱりと辞めて得意分野で起業し、自分資本を活かし、人間関係資本を縦横無尽に使い、お金資本を得ていくこと、それが一番いいと私は考えている。これが、時代の変化から見えてくる、これからの生き方である。」(149頁)

このブログでもときどき触れるトピックです。

結論、その人の好きにすればいいのですよ(笑) 

所有して幸せを感じるのであれば所有すればいいのです。

私は、所有することで幸福度が上がるどころか、かえって不幸になるので、できる限りモノを所有しないようにしているにすぎません。

畢竟、所有することによってコストやリスクが増えるのが面倒なのです。

正しい、間違っているという問題ではなく、価値観の問題です。

労働者性40 「業務委託」との文言のある契約書に基づく労働の雇用契約該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、「業務委託」との文言のある契約書に基づく労働の雇用契約該当性に関する裁判例を見てみましょう。

サンフィールド事件(大阪地裁令和2年9月4日・労判1251号89頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、(1)①主位的に、雇用契約に基づく賃金請求権として、68万2080円+遅延損害金の支払を求め、②予備的に、業務委託契約に基づく報酬請求権として、68万2080円+遅延損害金の支払を求め、
(2)立替金精算合意に基づく請求権として、8万0918円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、68万2080円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、8万0918円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 そもそも当該契約が雇用契約に該当するか否かは、形式的な契約の文言や形式のいかんにかかわらず、実質的な使用従属性を、労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素をも勘案して総合的に判断すべきである。
これを本件について検討するに、①Xに、Y社からの具体的な仕事の依頼や業務従事の指示等に対する諾否の自由があったとはいえないこと、②Xは、業務内容及びその遂行方法について、Y社又はY社を通じてa社から、具体的な指揮命令を受けていたこと、③Xは、Y社の命令、依頼等により、通常予定されている業務以外の業務に従事することがあったこと、④Xは、Y社又はY社を通じてa社から、勤務場所及び勤務時間の指定及び管理を受けており、労務提供の量及び配分についての裁量はなかったこと、⑤XがX以外の者に労務の提供を委ねることは予定されていなかったことが認められ、これらの事実によれば、Xの労務提供の形態は、Y社の指揮監督下において労務を提供するというものであったということができる。
また、Xの報酬は、出来高制ではなく、時間を単位ないし基礎として計算され、欠勤した場合は応分の報酬が控除され、いわゆる残業をした場合には通常の報酬とは別の手当が支給されるものであったことが認められ、これらの事実によれば、Xの報酬は、Y社の指揮監督下で一定時間労務を提供したことの対価であり労務対償性を有していたということができる。
加えて、Xの採用過程は労働者のそれと同じであり、Xは業務に要した経費を負担していないことが認められ、本件全証拠によっても、Xの報酬が他の労働者の報酬と比して高額であるとか、Xが自己の資金と計算で事業を行っているといった事実は認められない。
以上によれば、Xは、Y社の指揮監督下で労務を提供し、労務の対価として報酬を得ていたものであり、XとY社は使用従属関係にあるということができるから、本件契約は雇用契約に当たるというべきである。

指揮監督関係が存在する場合には、仮に契約書のタイトルが業務委託契約であったとしても、労働者性は肯定されます。

雇用と業務委託の契約の特徴・性質をしっかり理解していないと、多くの場合、雇用と判断されてしまいますのでご注意ください。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介1241 人生の大則#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度読み直してみました。

非常に薄い本ですが、中身はとても濃いです。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

心ここに在らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず、食えどもその味を知らず」(20頁)

古典の名著「大学」にある言葉です。

同じものを見ても、聞いても、感じ方、捉え方は人それぞれです。

その差が結果に出ているだけの話です。

当たり前といえば当たり前の話です。

毎日、ただ漫然と過ごしている人と成長・向上を願い努力している人で同じわけがありません。

厳しいようですが、疑う余地のない真実です。

解雇358 休職期間満了による退職扱いおよび予備的解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、休職期間満了による退職扱いおよび予備的解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

丙川商店事件(京都地裁令和3年8月6日・労判1252号33頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員として稼働していたXらが、それぞれ適応障害等を発症したとして、Xは平成29年11月2日から、X2は同年9月28日から休職していたが、Y社が、主位的に、X1につき平成30年8月2日付け、X2につき同年6月28日付けで休職期間満了による退職扱いとし、また、予備的に、Xらにつき令和元年10月30日付けで解雇するとの意思表示をしたことから、Y社に対し、本件各退職扱い及び本件各解雇はいずれも無効であると主張して、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②労働契約に基づき、Xらが復職を申し出た平成31年2月分以降の未払賃金+遅延損害金の支払を求めている事案である。

反訴は、Y社が、Xらが休職を開始して以降、Xらの社会保険料等を立て替えて支払ってきたとして、Xらに対し、不当利得に基づき、それぞれ立替金相当額の利得金+遅延損害金の支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

地位確認請求認容

Y社の反訴請求棄却

【判例のポイント】

1 本件就業規則17条1号は、休職事由の一つとして、文言上、「業務上の傷病により欠勤し3カ月を経過しても治癒しないとき(療養休職)」と規定している。一方で、本件訴訟において、Xらは、Xらの各休職事由につき、「業務上の傷病」であるとは主張しておらず、「業務外の傷病」として取り扱われることについて当事者間に争いはない
Y社は、労働基準法上、業務上の傷病により休職中の従業員を退職させることはできないから(同法19条)、本件就業規則17条1号に「業務上の」とあるのは明白な誤記であり、正しくは「業務外の」であるとして、Xらに同号が適用されると主張する。
確かに、業務上の傷病の場合に休職中の従業員を解雇することは労働基準法19条に反し、強行法規違反として無効の規定となるから、本件就業規則17条1号に「業務上の」と記載されているのは、同規則作成時において、何らかの誤解等があった可能性は否定しきれない。また、一般に、業務外の傷病に対する休職制度は、解雇猶予の目的を持つものであるから、本件就業規則17条1号を無効とはせずに、「業務外の傷病」であると解釈して労働者に適用することは、通常は労働者の利益に働く解釈であると考えられる。
しかしながら、本件においては、上記規定による休職期間満了後も引き続きY社から休職扱いを受けてきたXらが、上記休職期間満了により既に自然退職となっていたか否かが争われている。このような場面において、労働者の身分の喪失にも関わる上記規定を、文言と正反対の意味に読み替えた上で労働者の不利に適用することは、労働者保護の見地から労働者の権利義務を明確化するために制定される就業規則の性質に照らし、採用し難い解釈であるといわざるを得ない。
したがって、本件就業規則17条1号を「業務外の傷病」による休職規程であるとして、これをXらに適用することはできないというべきである。

珍しい事案ですね。

就業規則作成時のケアレスミスにより、休職期間満了による退職処分が認められなかったわけです。

就業規則の作成は、必ず顧問弁護士や社労士に依頼しましょう。

本の紹介1240 3つの真実#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度読み直してみました。

引き寄せの法則を学ぶためにはとても分かりやすい本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

真に賢い人間は、『自分にとってなにが一番大切なのか』を知り、『その一番大切なものを大切にするためにはどうすればよいのか』を考える。一番大切なものを一番大切にするためには、目標や計画を修正しなければならんこともある。それも勇気が必要じゃがな。」(154頁)

人によって大切なものは異なります。

みなさんは、自分が生きていく上で大切にしているものを大切にできていますか?

忖度や同調圧力、世間体のせいで、本当はやりたくないことを我慢してやっていませんか?

私が最も大切にしているのは、間違いなく「自由」です。

自由とはすなわち、常に「選択肢がある」「選択できる」という状態です。

自分の人生なので「我がまま」に生きたい、ただそれだけです。

今年に入って、もう1か月が終わってしまいました。気づいたら今年も終わっているのでしょう。

自由に生きようが、我慢して生きようが、いずれにせよ人生はあっという間に終わってしまいます。