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今日は、雇止めが不法行為に該当するとされた事案を見ていきましょう。
社会福祉法人特別区人事・厚生事務組合社会福祉事業団事件(東京地裁令和3年5月26日・労経速2465号37頁)
【事案の概要】
本件は、Y社と期間の定めのある雇用契約を締結していたXが、Y社による違法無効な雇止めにより精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料300万円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
Y社は、Xに対し、50万円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 本件雇止めは無効であるところ、無効な雇止めが直ちに不法行為に該当するとはいえないが、本件雇止めについては、契約更新に対する合理的期待は高かったというべきであり、雇止めの態様を見ても、Y社は、Xに本件雇止めの理由として看護師の過員という明らかに合理性のない理由を告げた後、Xに書面の交付を求められるや、雇止めの理由について「事業団の運営事業の経営状況により判断する。」という本件規則上の根拠条文を掲記するのみで具体的な理由が記載されていない文書を交付するという不誠実な対応に終始しているのであるから、本件雇止めは不法行為に該当するというべきである。
そして、相当期間Y社に貢献してきたXが本件雇止めにより精神的苦痛を被ったことは明らかであり、Xが、本件雇止めの無効及び雇用継続を前提とする賃金請求や、逸失利益として賃金相当額の損害賠償請求を行っていないという事情に照らすと、本件においては精神的苦痛に対する慰謝料の支払を命ずるのが相当であり、その額は、これまで検討してきた事情のほか、不法行為後の事情としてY社がXから本件雇止めが無効である旨の通知を受けるや早期に復職の提案をしてXの心情に配慮したことなど本件によって認められる諸般の事情を総合的に考慮すると、50万円と認めるのが相当である。
解雇や雇止め事案で、地位確認+バックペイという構成ではなく、慰謝料一本ということはあまりありませんが、本件では、慰謝料のみ請求したため、結果としては、このような少額の支払を命じられています。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。