解雇356 整理解雇における解雇回避努力の重要性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、整理解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ストーンエックスフィナンシャル事件(東京地裁令和3年4月26日・労判ジャーナル114号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、Y社に対し、Y社がXにした平成31年3月8日付け解雇について無効であると主張し、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、雇用契約による賃金支払請求権に基づき未払賃金等の支払を求めるとともに、雇用契約上賞与を支払う旨の約定があったなどと主張して、雇用契約による未払賞与等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

未払賞与等支払請求は棄却

【判例のポイント】

1 Y社の管理会計上の営業損益は、他社との競争激化でY社の扱うFX取引量が減少したことにより、赤字となり、移転価格会計制度で米国親会社が赤字による損失を引き受けることでY社の販売費及び一般管理費に7パーセントを上乗せした収入を得ることができていたところ、米国親会社からY社に対して繰り返し経費削減要求がされた中で人員削減も要求されたのであるから人員削減の必要はあるといえるが、希望退職者募集ないし退職勧奨について、説明できているのはXのみであり、Y社は希望退職者募集に係る詳細な事実についてこれを認めるに足りる証拠を提出しないから、本件判断にあたり、希望退職者募集はXに対するもの以外は有無ないし内容について不明であり、解雇回避努力は甚だ不十分というほかなく、Y社が主張するXを被解雇者に選定した理由は、基準の客観性に乏しいことを指摘せざるを得ないこと等から、①人員削減の必要性はあるといえるものの、②解雇回避努力は甚だ不十分でこれを認めることができず、③被解雇者の選定の妥当性にも疑問が残ることから、④手続の相当性に関する具体的事情を検討するまでもなく、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であるとも認められず、解雇権を濫用したものとして無効というほかない。

人員削減の必要性が認められているにもかかわらず、手続面で不備があったために無効と判断されています。

解雇をする上で必要なプロセスについては、事前に必ず顧問弁護士に相談するようにしましょう。